セキュリティインシデントが発生した際、その報告の仕方は非常に重要です。
特に、技術的な詳細を一般の人々にも理解できるように伝えることが求められます。
これは、組織の信頼性を維持する上で欠かせません。
最近、ある大学のセキュリティインシデント報告について考える機会がありました。
そこで、いくつかの表現に違和感を覚えました。
このことから、適切な報告の重要性について深く考えさせられました。
問題のあった表現とその修正
大学の報告書には以下のような記述がありました。
当該サーバで利用するバージョンのPHP言語に脆弱性があり,この脆弱性に対する学外からのHTTPを用いた攻撃により,サーバ上のファイルが改ざんされました。 不正ファイルに起因するSEOポイズニングにより,当該サーバのドメインに対するGoogleの検索結果が汚染され,海外のWebサイトに誘導されるようになっていました。
この文章には、いくつかの問題点がありました。
まず、「SEOポイズニング」という専門用語の使用です。
次に、「Googleの検索結果が汚染され」という不正確な表現があります。
さらに、事象の因果関係が不明確でした。
これらの問題点を踏まえ、より正確で分かりやすい表現に修正しました。
修正後の文章は以下の通りです。
当該サーバで利用するバージョンのPHP言語に脆弱性がありました。 そして、この脆弱性に対する学外からのHTTP攻撃により、サーバ上のファイルが改ざんされました。 具体的には、悪意のあるコードや隠しリンクがファイルに挿入されたのです。 この改ざんにより、サーバのコンテンツが汚染されました。 その結果、検索エンジン最適化(SEO)を悪用した攻撃が行われました。 そして、当該サーバのドメインに関連するGoogleの検索結果に不適切なコンテンツが表示されるようになりました。 最終的に、ユーザーが検索結果をクリックすると、意図せず海外のWebサイトに誘導されるようになっていました。
修正のポイント
専門用語の説明
「SEOポイズニング」という専門用語を避けました。
代わりに、「検索エンジン最適化(SEO)を悪用した攻撃」と言い換えました。
正確な表現
「Googleの検索結果が汚染され」という表現を修正しました。
「Googleの検索結果に不適切なコンテンツが表示されるようになり」としたのです。
これにより、Google自体が操作されたわけではないことが明確になります。
因果関係の明確化
事象の流れを順を追って説明しました。
そして、何が原因で何が結果なのかを明確にしました。
なぜ適切な表現が重要なのか
誤解の防止
不正確な表現は、問題の本質を誤解させる可能性があります。
例えば、「Googleの検索結果が汚染された」という表現には問題があります。
これは、Google自体にセキュリティ問題があったと誤解される恐れがあるのです。
信頼性の維持
正確で分かりやすい報告は、組織の透明性と信頼性を高めます。
技術的な詳細を適切に伝えることが重要です。
そうすることで、組織が状況を正確に把握し、適切に対応していることを示すことができるのです。
適切な対応の促進
問題を正確に伝えることには大きな意味があります。
関係者全員が状況を正しく理解できるからです。
そして、適切な対応策を講じることができるようになります。
まとめ
セキュリティインシデントの報告において、言葉の選び方は非常に重要です。
技術的な正確さを保つことが必要です。
同時に、一般の人々にも理解できる表現を使用することが求められます。
今回の事例から、報告書作成時の注意点が明確になりました。
細心の注意を払うこと、そして必要に応じて専門家のレビューを受けることの重要性を再認識できたのです。
適切な報告は、単なる情報伝達以上の意味を持ちます。
それは組織の姿勢を示す機会です。
そして、信頼を築く重要な機会でもあるのです。
セキュリティ担当者だけでなく、広報担当者や経営層も含めて、この点を十分に認識する必要があります。
そして、慎重に対応していくことが求められるのです。