生成AI(人工知能)の進化により、企業の業務自動化は新たな段階に入っています。
特に注目を集めているのは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)の実践的な活用です。
そこで本記事では、ある大手商社による実証実験を紹介します。
従来の自動化における課題
企業の経理部門では、日々多くの文書処理が発生します。
そして、その多くは人手による作業が必要でした。
AI-OCR(光学的文字認識)の登場により、文字の読み取り自体は自動化できるようになりました。
しかし、内容の正しさの判断は、依然として人間の専門知識が必要でした。
RAGの新たな活用方法
従来のRAGは、単一の知識ベースを用いて生成AIの出力を強化する手法でした。
しかし、ある大手商社は、この手法をさらに発展させました。
この会社は2024年春、2ヶ月間にわたる実証実験を行いました。
その対象となったのは、保証債務に関する文書処理の自動化です。
システムの特徴は、2種類の専門知識データベースを組み合わせた点にあります。
1つは税理士法人の知見をプロンプトとして整理したものです。
もう1つは過去の業務事例やマニュアルをまとめたデータベースです。
このように目的の異なる2つのデータベースを活用することで、専門的な解釈と実務的な判断の両立を実現しました。
そして、文書からの情報抽出で97%、処理判断では98%という高い精度を達成しています。
ハイパーオートメーションへの発展
生成AIの登場は、業務自動化の概念を大きく変えました。
そして、「ハイパーオートメーション」という新しい考え方を生み出しています。
このアプローチは、従来のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは異なります。
なぜなら、ビジネス全体の視点から自動化を推進するからです。
単純な作業の置き換えではありません。
業務プロセス全体の最適化を目指しています。
そして、この手法は、デジタル時代における企業競争力の源泉となりつつあります。
将来への展望
生成AIを活用した業務自動化は、まだ始まったばかりです。
今回紹介した事例は、その可能性の一端を示したに過ぎません。
ただし、新技術の導入には慎重な判断が必要です。
単なる自動化の追求ではなく、ビジネス全体への貢献度を重要な評価指標とすべきです。
人間の専門性と生成AIの能力を適切に組み合わせることが重要です。
そうすることで、真の業務革新が実現できるでしょう。