AIで本当に週5個のアプリが作れるのか?MVPと本番環境の間にある深い溝

AIで本当に週5個のアプリが作れるのか?MVPと本番環境の間にある深い溝 AI

最近、RedditやXで興味深い投稿を見かけます。
「Claude CodeやCursorを使って週に5-7個のプロジェクトを完成させた」という内容です。

私も最初は衝撃を受けました。
でも、よく考えてみてください。

本当に週に5個も「完成した」プロジェクトを作れるのでしょうか。

「完成」の定義を問い直す

ある開発者がRedditで興味深い質問を投げかけていました。
彼は100ファイル未満の中規模プロジェクトに数ヶ月かけて取り組んでいる。

一方で、週に複数のプロジェクトを完成させたという人たちがいる。
この差は何なのか、と。

コメント欄が示す真実は明快でした。
「最後の10%が90%の作業量」という古典的な格言があります。

多くの「完成」プロジェクトは実はMVPレベルだったのです。
つまり、最小限の機能しか持たないデモ版でした。

本番環境レベルの開発に必要なもの

実際の開発現場では、多くの作業が必要です。

まず、フロントエンドとバックエンドの統合テスト。
これだけで数日かかることも珍しくありません。

次に、エッジケースの処理です。
ユーザーが予想外の操作をしたときの対応を考える必要があります。

セキュリティ対策も欠かせません。
SQLインジェクションやXSS攻撃への対策は必須です。

パフォーマンス最適化も重要です。
読み込み時間が3秒を超えると、ユーザーの半分は離脱してしまいます。

そして、CI/CDパイプラインの構築。
これが意外と時間を食います。

高速開発の裏技:–dangerously-skip-permissions

興味深いことに、多くの「高速開発者」が使っているテクニックがあります。
それは、Claude Codeの–dangerously-skip-permissionsフラグです。

このフラグを使うと何が起きるか。
AIがファイルの作成や変更を行う際の確認をスキップできるのです。
開発速度は確かに上がります。

しかし、名前の通り「危険」です。
賢明な使い方は、開発専用のVMやDockerコンテナ内での利用です。
メインOSで使うのは避けましょう。

経験値が生む圧倒的な差

20年以上の開発経験を持つエンジニアのコメントが印象的でした。

AIコーディングアシスタントは平等化装置ではない。
増幅器だ

彼の指摘は的を射ています。
経験豊富な開発者がAIを使えば、生産性は10倍になるかもしれません。

でも、初心者が使ったらどうでしょう。
初心者レベルのコードが速く生成されるだけです。

現実的なAI活用法

では、どうすればAIツールを効果的に使えるのでしょうか。
実践的なアプローチを紹介します。

1. プロジェクトの計画に時間をかける

詳細なPRD(製品要求仕様書)を作成します。
そして、それをAIに理解させます。
この準備段階が成功の鍵です。

2. モジュール化を徹底する

巨大な単一ファイルは避けましょう。
代わりに、小さな機能単位に分割します。
AIは小さなコンテキストの方が得意だからです。

3. テスト駆動開発(TDD)を採用する

AIにテストを書かせます。
次に、それをパスするコードを生成させる。
この順序が重要です。

4. 複数のAIを使い分ける

Claude Codeで行き詰まったら、別のAIに相談しましょう。
視点を変えることで解決策が見つかることがあります。

ワークフローの最適化

効率的な開発者たちは、独自の工夫をしています。
複数のプロジェクトを並行して進める人もいます。

Git worktreeを使って複数の機能を同時開発する。
MCPサーバーを活用してパッケージ管理を自動化する。
こうした工夫が生産性を高めます。

ある開発者は面白い方法を使っていました。
ターミナルタブを5つ以上開く。
それぞれでClaude Codeのインスタンスを実行する。

そして、タスクを振り分けて並列処理させる。
まるでチームマネージャーのような働き方です。

本当に価値のあるものを作る

速さだけを追求しても意味がありません。
週に7個の使い捨てアプリを作る。

それより、1ヶ月かけて1つの優れたアプリを作る。
どちらが価値があるでしょうか。

ある開発者の言葉が心に残りました。

顧客は100%のユニットテストカバレッジなんて気にしない。
動作の一貫性を求めているだけだ

つまり、完璧を求めすぎてはいけません。

でも、必要十分な品質は確保する。
このバランスが大切です。

AIツールとの正しい付き合い方

AIコーディングツールは確かに革命的です。
でも魔法の杖ではありません。

プロトタイプ作成には最適です。
アイデアを素早く形にできます。

市場の反応を見ることができます。
これはAIの得意分野です。

一方で、本番環境向けの堅牢なシステムはどうでしょう。
まだ人間の判断と経験が不可欠です。

週に5個のプロジェクトを「完成」させられるかもしれません。
でも、それが本当に価値のあるソフトウェアかどうか。
これは別問題です。

AIツールを使いこなすコツがあります。
その限界を理解すること。

そして、適切な場面で適切に使うこと。
何より、基礎的なプログラミングスキルを磨き続けることです。

結局のところ、AIは優秀なジュニア開発者のようなものです。
指示を与えれば素早くコードを書いてくれます。

でも、アーキテクチャの設計はどうでしょう。
重要な判断はどうでしょう。
これらは、まだ人間の仕事なのです。

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