新しいビジネスアイデアを思いついたとき、ChatGPTに意見を求めたことはありませんか?
「素晴らしいアイデアですね!」
「大きな可能性を秘めています」
このような返答ばかりが出てきます。
本当に価値があるのか判断に困った経験があるはずです。
最近、Redditで興味深い投稿を見つけました。
サイバーセキュリティ出身の投稿者が、ビジネスアイデアを徹底的に批判するChatGPTプロンプトを開発したというのです。
このアプローチは「レッドチーム演習」という手法を応用したもの。
とても実践的だと感じました。
なぜChatGPTは肯定的すぎるのか
ChatGPTは協力的で建設的な対話を心がけるよう設計されています。
これは多くの場面で有益です。
しかし、ビジネスアイデアの検証には不向きです。
現実のビジネス環境は厳しいものです。
競合他社、規制、市場の変化など、多くの脅威が存在します。
これらのリスクを事前に把握できなければ、大きな損失につながります。
レッドチーム思考とは
レッドチーム演習は、サイバーセキュリティ分野で使われる手法です。
自社のシステムに意図的に攻撃を仕掛けます。
そして、脆弱性を発見します。
この考え方をビジネスアイデアの検証に応用できます。
以下のような視点で批判的に分析します:
- 競合他社がどう攻撃してくるか
- 規制がどう変化する可能性があるか
- 社会的な批判をどう受けるか
- 技術的な問題がどこで発生するか
MVTAフレームワークの5つの攻撃ベクター
Reddit投稿で紹介されていたMVTA(Multi-Vector Threat Analysis)フレームワークがあります。
これは5つの角度からビジネスアイデアを攻撃します。
1. 技術・製品の完全性
スケーラビリティの問題を検証します。
サプライチェーンの脆弱性も確認します。
ユーザビリティの欠陥も見逃しません。
例えば、急成長したときにシステムがダウンしないか。
主要サプライヤーが競合に買収されたらどうなるか。
こういった観点で分析します。
2. 市場・経済的実現可能性
競合の動きを予測します。
価値提案が崩壊するシナリオも想定します。
顧客離れの可能性も検討します。
大手企業が参入してきたらどうなるか。
代替品が登場したらどう対応するか。
これらを事前に考えておきます。
3. 社会・倫理的共鳴
炎上リスクを洗い出します。
サービスが悪用される可能性も考慮します。
倫理的な問題がないかも確認します。
SNSでどんな批判を受ける可能性があるか。
サービスが悪意を持って使われたらどんな影響があるか。
これらを検討します。
4. 法的・規制遵守
法規制の変更リスクを分析します。
訴訟リスクも評価します。
異なる地域での法的矛盾も確認します。
新しい規制で事業が成立しなくなる可能性はないか。
特許侵害で訴えられるリスクはないか。
これらを事前にチェックします。
5. ナラティブ・政治的な武器化
ブランドイメージが歪曲される可能性を評価します。
悪意ある関連付けのリスクも考えます。
誤解される可能性も想定します。
メディアやSNSでどのように誤解されるか。
どんな形で攻撃される可能性があるか。
これらを想定しておきます。
実践的な使い方
このフレームワークを使うには、まずビジネスアイデアの核心要素を明確にします:
ハイコンセプト:一文でアイデアを説明 価値提案:誰のどんな問題を解決するか 成功指標:18か月後の具体的な目標 主要な前提条件:市場、技術、ビジネスモデルに関する仮定
次に、各攻撃ベクターについて脆弱性を評価します。
1から5のスコアをつけます:
- 1点:致命的(回復不可能な欠陥)
- 2点:重大(根本的な方向転換が必要)
- 3点:大きな弱点(相当な対策が必要)
- 4点:中程度(管理可能な問題)
- 5点:強固(この攻撃に対して強い)
批判と建設のバランス
ただし、このアプローチには注意点もあります。
Redditのコメントでも指摘がありました。
過度に批判的になりすぎる危険性があるのです。
実行可能なアイデアまで潰してしまうかもしれません。
ある程度のリスクは常に存在します。
重要なのは、致命的な欠陥を事前に発見することです。
そして、対策を講じることです。
完璧を求めすぎて何も始められないのでは本末転倒です。
また、ChatGPTに批判的になるよう指示しても限界があります。
それは本当の批判的思考ではありません。
AIは指示に従って否定的な意見を生成するだけです。
最終的には、人間が判断する必要があります。
より効果的な検証方法
Reddit投稿のアプローチを参考にしつつ、以下の方法も組み合わせると効果的です:
段階的な検証
最初から全面的な批判をしません。
まず基本的な実現可能性を確認します。
その後、徐々に厳しい質問をしていきます。
複数の視点の活用
一つのChatGPTセッションで完結させません。
異なる役割や視点で複数回検証します。
顧客の視点、投資家の視点、規制当局の視点などを使い分けます。
実データとの照合
ChatGPTの分析結果を検証します。
実際の市場データや事例と照らし合わせます。
机上の空論にならないよう注意します。
まとめ
ChatGPTがイエスマンになる問題は確かに存在します。
しかし、適切なフレームワークがあれば解決できます。
批判的な視点を持つことで、より現実的な評価が可能になります。
レッドチーム思考を取り入れたMVTAフレームワークは強力なツールです。
ビジネスアイデアの弱点を発見できます。
ただし、これは出発点にすぎません。
重要なのはバランスです。
批判と建設のバランスを保ちながら、実行可能な改善策を見つけます。
完璧なアイデアは存在しません。
でも、事前に弱点を把握すれば成功の可能性は高まります。
ビジネスアイデアの検証は、単なる否定でも肯定でもありません。
現実的なリスクを直視します。
それでも前進する価値があるかを判断します。
ChatGPTはそのプロセスを支援するツールの一つとして活用していきましょう。