AIがコードの7割を書く時代 – それでもエンジニアが必要な本当の理由

AIがコードの7割を書く時代 - それでもエンジニアが必要な本当の理由 AI

AnthropicのCEO、ダリオ・アモデイ氏が興味深い発言をしました。
「社内で書かれるコードの70、80、90パーセントをClaudeが書いている」と。

この話を聞いて、多くの人はこう考えました。
「それならエンジニアの9割は解雇されたのか」と。

でも実際は違います。

エンジニアの仕事は「書く」から「考える」へ

Redditでこの話題について議論が盛り上がっています。
現役エンジニアたちの生の声が実に興味深いです。

あるベテランエンジニアは語ります。
「30年の経験があるが、今ではClaudeですべてを行っている」と。

彼らの話には共通点があります。
コードを書く作業の大部分はAIに任せられる。

しかし、システムの設計は違います。
品質管理も、複雑な問題の解決も。
これらは依然として人間の仕事なのです。

ある開発者の表現が印象的でした。

週に3〜5倍の仕事をこなせるようになった。
でも、まるで最近脳卒中を起こしたスタッフエンジニアと働いているようだ

この比喩、実に的確だと思いませんか?

AIコーディングの現実

AIが書くコードには特徴があります。
まず、AIは「怠惰な」コードを書きがちです。

型定義を省く。
不要なフォールバック処理を追加する。
エラーを静かに握りつぶす。

経験豊富なエンジニアなら、これらの問題をすぐに見抜けます。
そして、AIを教育していきます。

「強い型付けを維持して」
「fail fastで」
「PEP 604に準拠して」

こうした指示を繰り返すうちに、AIは徐々に賢くなっていく。
まるで新人エンジニアを教育するような感覚です。

なぜベテランほどAIを使いこなせるのか

ここで面白い逆説が生まれています。

コーディング経験が浅い人は、AIを使ってもなかなか成果を出せない。
一方、経験豊富なエンジニアは生産性を大幅に向上させています。

なぜでしょうか?

答えは単純です。
良いコードがどんなものか知らなければ、AIが生成したコードの良し悪しを判断できないから。

アーキテクチャの問題を見抜けない。
将来のメンテナンスで困る設計にも気づけない。
だから、経験が物を言うのです。

コード行数という指標の落とし穴

「コードの70%をAIが書く」という表現。
これには注意が必要です。

コード行数は生産性を測る適切な指標でしょうか?
実は大きな問題があります。

AIは冗長なコードを生成しがちです。
100行で済むところを1000行で書いてしまう。
だからこそ「70%をAIが書いているのに、エンジニアを減らせない」という現象が起きるのです。

本当に重要なのは別の指標です。
組織のKPIへの影響。
実際に出荷される機能の数。

これらこそが真の生産性を示します。

新しい開発スタイル:仕様駆動開発

AIの登場により、開発スタイルそのものが変わりつつあります。
これまでエンジニアは一日中コードを書いていました。

今は違います。
新しい仕事の流れ:

  • 問題を定義する
  • アーキテクチャを設計する
  • 実装の多くをAIに任せる
  • 生成されたコードをレビューする

これを「仕様駆動開発」と呼ぶ人もいます。
詳細な仕様を定義するには何が必要でしょうか。

深い技術知識です。
そしてドメイン知識も。

だからこそ、エンジニアの仕事がなくなるわけではないのです。

AIコーディングの限界

すべてがバラ色というわけではありません。

AIには明確な限界があります。
複雑なデバッグは人間の仕事です。

システム全体の設計も。
コードの整理とリファクタリングも。
これらの作業では、人間の判断が不可欠です。

セキュリティの問題もあります。
機密性の高いクライアントプロジェクトでは、AIを使えないケースが多い。

データベースの重要な情報を外部サーバーに送信する。
このリスクは、多くの企業にとって受け入れがたいものです。

今後の展望

この流れは加速するでしょうか。
それとも限界に達するでしょうか。

自動運転車の例を見てください。
「2年後には完全自動運転が実現する」と言われ続けました。

でも、もう10年が経ちました。
AIコーディングも同じ道をたどるかもしれません。

ただし、現時点で確実に言えることがあります。
AIはエンジニアを置き換えるのではない。
エンジニアの仕事を変えているのです。

タイピングの速さは重要ではなくなりました。
問題解決能力と設計センスが問われる時代になったのです。

そして興味深い変化も起きています。
エンジニアリングの民主化です。

高額な開発チームを雇えない小規模な組織。
彼らもAIの支援により、高品質なソフトウェアを開発できるようになりつつあります。

まとめ

「コードの70%をAIが書く」時代。

これは脅威でしょうか。
それとも機会でしょうか。

答えは、あなたがどう適応するかにかかっています。

AIを理解し、その強みと弱みを把握する。
そして協働する。
これができれば、生産性は飛躍的に向上します。

でも忘れてはいけません。
コードを書くことは、エンジニアリングの一部にすぎない。

問題を理解する。
解決策を設計する。
品質を保証する。

これらの本質的な仕事は、今も、そしてこれからも、人間の領域として残り続けるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました