求人サイトの運営者が直面する最大の課題は何でしょうか。
それは膨大な求人情報を正確に収集し、整理することです。
最近、あるRedditユーザーが興味深い事例を共有していました。
月間500万アクセスを達成した求人プラットフォームの構築です。
そこではChatGPTが重要な役割を果たしていました。
毎日40万件もの新規求人情報を処理するシステム。
その実現方法を詳しく見ていきましょう。
最初の失敗から学んだこと
多くの開発者が最初に考えるアプローチは単純です。
求人ページのHTMLをそのままChatGPTに渡す。
そして、必要な情報を抽出してもらう。
職種名、必要スキル、給与情報などを一度に取得できれば効率的だと考えるでしょう。
しかし、この方法には大きな問題があります。
WebページのHTMLには本文以外にも多くの要素が含まれているのです。
- フッター
- SEO用のテキスト
- 免責事項
- 広告
これらのノイズがChatGPTの判断を混乱させます。
結果として、実際には存在しない情報を生成してしまうケースが頻発したそうです。
効果的なアプローチ:段階的な処理
この問題を解決するため、開発チームは新たな戦略を採用しました。
スクレイピングコードの自動生成
企業の採用ページは頻繁に構造が変更されます。
その度に手動でスクレイパーを修正するのは非効率です。
そこでChatGPTを使ってスクレイピングコードの作成と修正を自動化しました。
ページ構造の変更を検知したら、新しい構造に合わせたコードを生成させるのです。
フィールド単位での情報抽出
「すべての情報を一度に抽出する」という考えを捨てました。
代わりに個別に処理する方式に変更したのです。
まず、職種名を抽出します。
次に必要スキル。
そして、給与情報という具合です。
この方法により、ChatGPTが誤った情報を生成する確率が大幅に減少しました。
各フィールドに特化した処理には利点があります。
精度が向上するだけではありません。
問題が発生した際の原因特定も容易になるのです。
企業情報の検証システム
求人情報の信頼性を確保するため、独自の企業データベースを構築しました。
ChatGPTは収集した求人情報を分析します。
それが実在する企業のものか、人材紹介会社経由のものかを判定するのです。
LinkedIn(リンクトイン)やビズリーチ、Wantedlyなどの大手求人サイトには多くの問題があります。
同じ求人が複数回投稿されていたり、既に埋まったポジションが残っていたり。
こうした「ノイズ」を除去することが重要なのです。
そうすることで、質の高い求人情報だけを提供できるようになりました。
システムアーキテクチャの全体像
実際に稼働しているシステムは4つの主要コンポーネントで構成されています。
- 新規求人ページの発見
企業の採用ページを継続的に監視します。
新しい求人情報源を自動的に検出する仕組みです。 - 情報の収集と解析
発見したページから求人情報を抽出します。
そして構造化データに変換します。 - データの検証と統合
収集した情報を内部の企業データベースと照合。
信頼性を確認する重要なステップです。 - 継続的な状態監視
求人がまだ有効かどうかを定期的にチェックします。
古い情報は除外されます。
ChatGPTの真の価値
この事例から学べる重要な点があります。
ChatGPTが単なる「パーサー」以上の役割を果たしているということです。
データパイプライン全体で活用されています。
発見から検証まで、あらゆる段階でChatGPTが貢献しているのです。
特に印象的なのは、ChatGPTを使ってChatGPTの弱点を補完している点でしょう。
一度にすべてを処理させるのではありません。
段階的なアプローチを採用することで、AIの強みを最大限に活かしています。
実装時の重要なポイント
大規模なデータ処理にChatGPTを活用する際は、いくつかの点に注意が必要です。
コストの最適化
同じリクエストを繰り返し送信しないようにしましょう。
キャッシュシステムの実装が重要です。
リクエストとモデルパラメータが完全に一致する場合があります。
その際はキャッシュから結果を返します。
これによりトークン消費を抑えられるのです。
コンテキストの明示的な提供
ChatGPTには永続的なメモリがありません。
そのため、必要な文脈情報は毎回システムプロンプトで提供する必要があります。
これにより一貫性のある処理が可能になるのです。
エラー処理の重要性
Webページの構造は予告なく変更される可能性があります。
エラーを検知したらどうするか。
ChatGPTを使って新しい構造に対応したコードを生成する仕組みが必要です。
偽求人問題への対応
求人サイト運営者にとって、偽求人や質の低い求人情報は深刻な問題です。
この課題への対策を見ていきましょう。
信頼できるATSプロバイダーがあります。
海外ではGreenhouse、Lever、Ashbyなど。
日本ではHRMOS採用、ジョブカン採用管理、HERP Hireなどです。
これらは企業を事前に審査してから求人掲載を許可しています。
こうしたプラットフォームから直接取得した求人情報は信頼性が高いと判断できます。
一方で、人材紹介会社には別の問題があります。
同じ求人を複数の地域に重複投稿することがあるのです。
リモート勤務可能な1つの求人が、数千の都市に個別に投稿される。
こうしたケースも珍しくありません。
重複を検出し、除外する仕組みが不可欠なのです。
まとめ
ChatGPTを活用した大規模データパイプラインの構築。
適切な設計と実装により、大きな成果を生み出せます。
重要なのは、AIを万能ツールとして使わないことです。
その特性を理解した上で、段階的かつ戦略的に活用する。
これが成功の鍵となります。
この事例では驚異的な規模を実現しています。
月間500万アクセス、日次40万件の求人情報処理。
しかし、その成功の裏には試行錯誤があります。
最適化されたアーキテクチャがあることを忘れてはいけません。
AIの能力を過信せず、その限界を理解する。
その上で活用する。
これが大規模システムでChatGPTを成功させる秘訣となるでしょう。