AIに仕事を奪われた?データサイエンス歴11年の叫び

AIに仕事を奪われた?データサイエンス歴11年の叫び AI

データサイエンティストとして10年以上のキャリアを積んできた人たちがいます。
今、彼らは大きな岐路に立っています。

XGBoostやLightGBMの登場に心躍らせた。
統計的A/Bテストの設計に没頭した。
予測モデルの精度向上に情熱を注いできた。

そんなベテランたちが、GenAIの波に戸惑いを感じているのです。

最近のRedditで興味深い投稿を見つけました。
11年の経験を持つデータサイエンティストが、現在の仕事に対する違和感を吐露していたのです。

彼らの悩みは、多くのベテランが共感するものでした。
今回は、この投稿から見えてくるデータサイエンス業界の転換点について考察してみましょう。

かつての情熱はどこへ

通信業界から金融業界へ。
時系列分析からレコメンデーションシステムへ。
データサイエンティストのキャリアは、技術の進化とともに発展してきました。

新しいブースティングアルゴリズムの登場を心待ちにしていた時代がありました。
XGBoostが発表されたときの興奮を覚えています。

CatBoostやLightGBMを使ったアンサンブル学習では、わずかでも精度を向上させようと試行錯誤しました。
あれは確かに、知的好奇心を刺激する充実した時間でした。

統計的A/Bテストも奥が深い分野です。
単純なt検定だけではありません。

検出力分析、層別化、選択バイアスの補正、季節性効果の考慮。
これらを適切に設計する必要がありました。

そして、ビジネスチームに対してROIや顧客コンバージョンの改善を数値で示す。
そこには確かな手応えがありました。

しかし今、状況は一変しています。

GenAIブームがもたらした変化

会議に次ぐ会議。
そこで語られるのは「GenAI」「Agentic AI」といった言葉ばかりです。

実際の効果検証もありません。
それなのに、導入ありきで話が進んでいきます。
デスクに戻れば、プロンプトエンジニアリング、データクリーニング、評価の繰り返し。

かつて専門性が求められた領域でも、変化が起きています。
今やビジネス部門の人たちが、それなりのプロンプトを書けるようになってしまいました。

「私たちの価値はどこにあるのか」

この問いに直面している人は少なくないでしょう。
プリンシパルレベルのデータサイエンティストでさえ、同じ悩みを抱えています。

AIツールの登場で、これまで積み上げてきたスキルが意味を失いつつある。
そう感じる瞬間があるのです。

従来型MLの価値を再認識する

興味深い事実があります。
GenAIブームの中でも、従来の機械学習モデルが依然として大きな価値を生み出しているのです。

ある経験豊富なデータサイエンティストはこう語っています。

私が開発するモデルは、今でも莫大な利益を生み出している。
GenAIがどれだけ騒がれても、実際のビジネス課題の多くは従来の手法で十分解決できる

確かに、従来型の機械学習が最適解となる場面は多くあります:

  • 予測精度が必要な場面
  • 解釈可能性が求められる場面
  • 計算コストを抑えたい場面

マネージャーたちは期待しています。
「AIを使えばもっと速くできるはず」と。

しかし実際には、GenAIの出力は不安定です。
品質管理も困難です。

開発支援ツールのCopilotでさえ、問題があります。
時に的外れな提案をしてきて、かえって作業の邪魔になることもあるのです。

新たな道を模索する

では、この状況をどう打開すればよいのでしょうか。
投稿やコメントから、いくつかの興味深い選択肢が見えてきました。

因果推論への転向

「Causal Machine Learningの世界に来ませんか」という提案がありました。

予測ではなく因果関係の解明。
これは統計学の領域でもあります。

しかし近年は、機械学習の手法を組み合わせた新しいアプローチが発展しています。
メタラーナーやダブル機械学習といった手法があります。

これらは大規模データと機械学習の知識を活かせます。
そして、より深い洞察を得ることができます。
ハイパーパラメータチューニングや特徴量エンジニアリングの経験も活きる分野です。

スタートアップや独立の道

大企業での会議疲れから解放されたい。
実際の問題解決に集中したい。
そんな選択をする人も増えています。

選択肢はいくつかあります:

  • 独立してコンサルティングを始める
  • スタートアップに参加する
  • 自分でプロダクトを作る

これらの選択肢では、技術的な深さと幅広い経験が強みになります。

教育分野への転身

知識と経験を次世代に伝える。
これも魅力的な選択肢です。

GenAIブームの中で道を見失っているジュニアデータサイエンティストは多くいます。
彼らは体系的な学習機会を求めています。

オンラインコースの作成、メンタリング、大学での講師。
様々な形で貢献できるでしょう。

バランスを見つける

GenAIを完全に拒否するのは賢明ではありません。
かといって、盲目的に追従するのも問題です。

重要なのは、新しい技術を理解することです。
そして、自分の強みを活かせる領域を見つけることです。

GenAIは確かに強力なツールです。
しかし、それはあくまでツールの一つにすぎません。

本質的な能力は変わりません。

ビジネス課題を理解する。
適切な手法を選択する。
結果を解釈して価値を生み出す。

この能力は、AIがどれだけ進化しても価値を持ち続けるはずです。

まとめ

データサイエンスの世界は確かに変化しています。
GenAIの登場により、これまでのやり方が通用しなくなる場面も出てきました。

しかし、それは終わりではありません。
新たな始まりかもしれないのです。

因果推論、独立、教育。
様々な道が開かれています。

また、GenAIブームが落ち着けば、本質的な価値を生み出す従来型のアプローチが再評価される可能性もあります。
10年以上の経験は決して無駄にはなりません。

その知識と経験を、新しい文脈でどう活かすか。
今こそ、次の10年を見据えた選択をする時期なのかもしれません。

変化を恐れない。
でも流行に流されることもない。
自分にとって意味のある仕事を見つけること。

それが、経験豊富なデータサイエンティストが今、向き合うべき課題なのでしょう。

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