あなたはコードを書いている途中で、ドキュメントを確認するためにブラウザとエディタを何度も行き来していませんか?
特に新しいライブラリやフレームワークを使う際、問題が起こります。
AIアシスタントが自信満々に答えても、実際には存在しないAPIを提案されるのです。
これは開発者にとって大きなストレスとなります。
ある開発者が、この問題に対して興味深い解決策を実装しました。
Claude と Google の NotebookLM を連携させるシステムです。
本記事では、この技術的アプローチの仕組みと実用性について解説します。
開発の背景:なぜこの連携が必要なのか
AIアシスタントは非常に便利です。
しかし、大きな弱点があります。
学習データに含まれていない新しい技術について、AIが「創造的すぎる」回答をしてしまうのです。
マイナーなライブラリでも同様です。
存在しないメソッド名を提示します。
間違った使用例を自信を持って示します。
一方で NotebookLM には特徴があります。
アップロードされたドキュメントのみに基づいて回答する仕組みです。
情報がない場合、推測しません。
「分からない」と答えます。
この特性により、ハルシネーションのリスクが大幅に減るわけです。
ただし問題がありました。
NotebookLM を使うには、ブラウザでアクセスする必要があります。
コーディング中に何度もブラウザとエディタを切り替える。これは非効率的です。
技術的な実装:Claude Skills による統合
開発者は Claude Code Skills という仕組みを使いました。
そして、この問題を解決したのです。
システムの動作フローは以下のとおりです:
- Claude がコードを書く際に疑問が生じる
- 自動的に NotebookLM に質問を投げる
- NotebookLM が事前アップロードされたドキュメントから回答を検索
- Claude に返答が届く
- Claude はその情報を基に正確なコードを生成
実装は驚くほどシンプルでした。
ローカルの Claude Code 環境に git でスキルをクローンするだけです。
初回使用時、必要な依存関係が自動的にインストールされます。
セットアップの手順も簡単です。
まず Chrome で NotebookLM にログインします。
次に関連するドキュメントをアップロードします。
ノートブックを作成します。
そのノートブックを共有リンクとして公開します。
最後に Claude にそのリンクを伝えるだけです。
実践例:n8n ワークフローの自動生成
具体的な活用例を見てみましょう。
n8n は比較的新しいワークフロー自動化ツールです。
Claude の学習データには十分な情報が含まれていません。
そのため、Claude 単体では問題が起こります。
存在しないノードを提案してしまうのです。
関数も同様でした。
この問題に対して、開発者は準備を行いました。
n8n の完全なドキュメントを用意したのです。
約1200個のマークダウンファイルがありました。
それらを50個のファイルに統合します。
そして NotebookLM にアップロードしました。
Claude に指示を出すと、興味深いやり取りが始まりました。
Claude は「n8n での Gmail 連携の仕組みは?」と NotebookLM に質問します。
NotebookLM は具体的に回答しました。
Gmail Trigger をポーリングモードで使うか、Gmail ノードで Get Many を使います
次に Claude は「base64 エンコードされたメール本文のデコード方法は?」と尋ねます。
NotebookLM は正確な手順を返しました。
本文は payload.parts 内で base64url エンコードされています。 Function ノードでデコードできます
さらに Claude は質問を続けます。
「API が失敗した場合のエラーハンドリングは?」NotebookLM は適切な対処法を提示しました。
Error Trigger ノードを使い、Continue On Fail を有効にします
こうした AI 同士の対話を経て、Claude は結果を出します。
完璧なワークフロー JSON を一発で生成したのです。
存在しない API のデバッグに時間を費やす必要はありませんでした。
トークンコストとパフォーマンスの比較
この手法の効率性を数字で見てみましょう。
従来の方法について考えます。
ドキュメントを Claude に直接読み込ませる方法です。
この場合、非常に高いトークンコストがかかります。
それでもハルシネーションは発生しました。
結果的にデバッグ作業が必要になったのです。
ウェブ検索を使う方法では、中程度のトークンコストで済みます。
しかし問題がありました。
情報の信頼性が低いのです。
古い情報を参照してしまうリスクがありました。
間違った情報も同様です。
NotebookLM を経由する方法はどうでしょうか。
約3000トークン程度のコストで済みます。
そしてハルシネーションはゼロです。
なぜなら NotebookLM が情報を持っていない場合、回答を拒否するからです。
結果として、初回から動作するコードが得られました。
この効率性の理由は明確です。
NotebookLM の背後にある Gemini モデルは、すでに準備を終えています。
アップロードされたすべてのドキュメントを読み込んでいるのです。
理解もしています。
単なる検索ではありません。
コンテキストを踏まえた知的な回答を提供できるわけです。
システムの限界と注意点
このアプローチは有用です。
しかし、完璧ではありません。
Reddit のコメント欄では、重要な指摘がありました。
NotebookLM も完全にハルシネーションフリーではないという点です。
ある研究者は学術文書で厳密なテストを行いました。
その結果、NotebookLM でも誤った情報を生成するケースが確認されたのです。
これは LLM の構造的な限界と言えます。
ただし開発者の経験では、良好な結果が得られていました。
API ドキュメントのような技術文書では特にそうです。
NotebookLM は情報がない場合、明示的に伝えてくれます。
「情報源にない」と回答するのです。
これは科学的な議論とは異なる使用ケースかもしれません。
もう一つの制約があります。
Gemini モデルは約10万トークンを超えると性能が低下する傾向があるのです。
ドキュメントの量が膨大な場合、問題が起こる可能性があります。
RAG(Retrieval Augmented Generation)の検索精度が課題になるのです。
適切なチャンクが取得できなければどうなるでしょうか。
LLM は正しい回答を生成できません。
この問題への対策として、コミュニティでは議論が行われていました。
RAG システムの改善についてです。
NotebookLM の利用制限と回避策
NotebookLM には1日あたり50クエリの制限があります。
ただし、この制限はアカウント単位です。
開発者は興味深い回避方法を共有していました。
ノートブックを公開リンクとして共有します。
そして別の Google アカウントでアクセスするのです。
これで追加のクエリが可能になります。
セキュリティが気になる方はどうすればよいでしょうか。
使い捨てのアカウントを作成する方法もあります。
ただし、公開リンクの管理には注意が必要です。
代替手段との比較
コメント欄では質問がありました。
「なぜシンプルな RAG ツールを使わないのか」というものです。
この疑問は妥当です。
しかし NotebookLM を使う理由がいくつかあります。
まず、Gemini による高度な理解です。
事前にドキュメント全体を読み込んでいます。
そのため、単なるキーワード検索以上の洞察が得られるのです。
引用元の明示も自動的に行われます。
そのため、情報の検証が容易です。
そして何より、開発者自身が良い経験をしていました。
NotebookLM でです。
使い慣れたツールとの連携により、手動作業を削減できたのです。
実装上の制約
このシステムにはいくつかの技術的制約があります。
現在はローカルの Claude Code インストールでのみ動作します。
ウェブ UI では使用できません。
サンドボックスの制限があるためです。
ただし、ローカル環境があれば、導入は簡単です。
git clone だけで完了します。
MCP(Model Context Protocol)サーバー版も提供されています。
そのため、Cursor や Codex などの他のエディタでも利用可能です。
この柔軟性により、幅広い開発環境で活用できるでしょう。
この手法が示唆すること
この実装例は、重要な示唆を与えてくれます。
AI ツールの組み合わせ方についてです。
単一の AI に全てを任せるのは得策ではありません。
それぞれの強みを活かした連携が効果的なのです。
Claude は自然言語理解とコード生成に優れています。
NotebookLM は特定ドキュメントに基づく正確な情報検索が得意です。
この分業により、両者の弱点を補い合えるわけです。
コミュニティの反応も良好でした。
多くの開発者が同様の問題を抱えていたことが分かります。
特に社内 API を扱う際、このアプローチは有用でしょう。
専門的なライブラリでも同様です。
まとめ
Claude と NotebookLM の連携は、実用的なアプローチです。
AI アシスタントの精度向上に対してです。
ハルシネーションを完全に排除することはできません。
しかし、大幅に減らせます。
特定のドキュメントに基づいた正確な情報があるからです。
そのため、初回から動作するコードが得られる可能性が高まります。
実装は驚くほど簡単でした。
git clone とノートブックの共有だけで始められます。
トークンコストも抑えられます。
そして開発効率が向上します。
ただし万能ではありません。
ドキュメントの質と量により、効果は変わります。
使用するタスクの性質も影響します。
また、NotebookLM 自体にもハルシネーションのリスクがあることを忘れてはいけません。
それでも、検討する価値はあります。
コピー&ペーストの繰り返しから解放されたい開発者にとってです。
AI ツールは日々進化しています。
単体での使用だけでなく、適切な組み合わせを考えることが重要です。
そうすることで、より効果的な開発環境を構築できます。
あなたの開発ワークフローに合った連携方法を探してみてください。
