プログラミングを学ぶ目的は何でしょうか。
多くの人は「仕事で使うから」と答えます。
しかし、プログラミングの真価は別のところにあります。
それは、身近な問題を自分の手で解決できるようになることです。
本記事では、海外のエンジニアコミュニティで共有された実践的なPythonプロジェクトの事例を紹介します。
日常の課題をコードで解決するヒントが、きっと見つかるはずです。
10年使われ続けるシンプルなスクリプト
あるエンジニアがNASAのジェット推進研究所(JPL)でインターンをしていたときの話です。
研究者たちは、センサー画像に付随するヘッダーファイルを毎回手作業で入力していました。
世界トップクラスの頭脳を持つ人々が、単純な繰り返し作業に時間を費やしていたのです。
インターンだった彼は、この作業を自動化するPythonスクリプトを書きました。
驚くべきことに、そのスクリプトは10年経った今も現役で使われています。
この話が示唆するのは、「優秀な人ほど手作業を我慢してしまう」という皮肉な現実です。
大きな問題を解決することに集中するあまり、小さな非効率に目が向かなくなる。
新しい視点を持つ人間が「なぜ自動化しないのか」と疑問を持つことで、初めて改善が生まれることがあります。
法律事務所の郵便処理を自動化
ある法律事務所では、1日に200通以上の郵便物を処理する必要がありました。
従来は外部サービスに委託していたそうです。
そして、処理ページ数に応じた料金を支払っていました。
あるエンジニアが構築したシステムは、シンプルな仕組みでした。
まず、スキャンした大量の郵便物のPDFを受け取ります。
次に、空白ページを区切りとして認識します。
その後、個別のファイルに分割して、適切なネットワークドライブに振り分けます。
導入から数ヶ月で、処理したページ数は100万枚を超えました。
以前の外部サービスへの支払いを考えると、相当なコスト削減になったことでしょう。
このプロジェクトの価値は、技術的な複雑さにありません。
業務フローを正確に理解した上で、適切に自動化した点にあります。
「ちょうどいい」ツールを自分で作る
SQLデータベースに接続するPythonスクリプトを書く機会は多いでしょう。
しかし、選択肢は極端です。
SQLAlchemyのようなフル機能のORMは、小規模なスクリプトには大げさすぎます。
一方、素のデータベースドライバーは煩雑です。
カーソル操作やオブジェクトマッピングで手間がかかります。
「どちらでもない、中間のツールが欲しい」
こう考えたエンジニアは、自分でパッケージを作成しました。
既存のツールに不満があるなら、自分で作ってしまえばいいという発想です。
同様の例として、PDFフォームを扱うライブラリを開発した人もいます。
PDFフォームへの入力や抽出を行う既存ツールに満足できず、自分のニーズに合ったものを構築しました。
カレンダーへのこだわりから生まれたプロジェクト群
「なぜかカレンダーが好き」という理由で、複数のWebアプリを開発したエンジニアがいます。
最初のプロジェクトは、潮汐情報のカレンダーフィードを生成するアプリでした。
NOAAの位置IDを入力すると、その地点の潮汐情報がカレンダー形式で取得できます。
次に、学校のスポーツスケジュールを改善するアプリを作りました。
元のカレンダーでは種目や性別でフィルタリングできませんでした。
そこで、URLパラメータで絞り込めるレイヤーを追加したのです。
さらに、SSL証明書の有効期限をカレンダーフィードとして提供するアプリも作りました。
ドメインのリストをURLに渡すと、証明書の期限切れ日がカレンダーに表示されます。
一見すると別々のプロジェクトに見えます。
しかし、「情報をカレンダーフィードとして取得したい」という一貫したニーズに基づいています。
自分の興味や好みを起点にすると、継続的に開発するモチベーションが維持しやすくなります。
家業の効率化
家族が経営するレストランで働いていたエンジニアがいました。
彼は週末の給与計算に疲れていました。
作業内容は次のようなものです。
チップ、労働時間、給与などの情報を手作業で計算します。
そして、それを給与会社に送ります。
毎週のことなので、かなりの負担でした。
彼はこの作業を自動化するスクリプトを書きました。
さらに発展させて、シフト生成Webアプリも開発しました。
安定マッチングアルゴリズムを使い、従業員同士がシフトを交換できる機能も備えています。
「自分の仕事を楽にする」という動機は、開発において最も強力な原動力の一つです。
ECサイトの商品データ改善
Pythonを学び始めたばかりの人が、ECサイトの商品データ改善プロジェクトに取り組みました。
処理の流れはこうです。
まず、3万件のSKU(商品管理番号)を読み込みます。
次に、100件ずつバッチ処理でLLMに送信します。
そして、LLMが返したエンリッチメントデータをDuckDBに書き戻します。
現在は週次で実行され、商品情報の欠損を自動的に補完しています。
初心者でも、適切なツールを組み合わせれば実用的なシステムを構築できる好例といえるでしょう。
その他の興味深いプロジェクト
海外コミュニティで共有されたプロジェクトは他にも多数あります。
いくつか紹介します。
Excelの数式を異なる言語に変換するツールを作った人がいます。
Microsoftが数式を言語依存にしたため、異なる言語環境間で数式が壊れてしまう問題がありました。
それを解決するツールです。
フラットベッドスキャナー用のツールを作った人もいます。
複数の写真を一度にスキャンし、個別の画像ファイルに分割・回転して保存します。
Windowsでシステムリソースを監視するウィジェットを作った人もいました。
Linux環境で見かけた便利なウィジェットを、Windows向けに再現したものです。
psutilとNVIDIA APIのPythonラッパーを組み合わせています。
プロセスの監視と終了まで可能にしました。
自動化の価値を考える
これらのプロジェクトに共通するのは、「繰り返しの作業を見つけたら自動化する」という姿勢です。
自動化の価値は時間の節約だけではありません。
人間がミスしやすい作業をコンピュータに任せることで、品質も向上します。
また、自動化のプロセス自体が、業務フローを見直す良い機会になります。
AWSコンソールでの作業について、あるエンジニアはこう述べています。
コンソールでクリックしてできることは、すべてスクリプト化してチームと共有すべきだ。 APIがあるのに手作業を続ける理由はない
まとめ
Pythonで日常の問題を解決するプロジェクトは、必ずしも複雑である必要はありません。
JPLで10年使われ続けているヘッダーファイル生成スクリプト。
おそらく数十行程度のコードでしょう。
法律事務所の郵便処理システムも、空白ページの検出と振り分けという単純なロジックで構成されています。
重要なのは、日常の中で「これは自動化できるのでは」と気づく視点です。
そして、実際に手を動かしてコードを書くこと。
完璧なソリューションを目指す必要はありません。
自分の問題を解決するコードを書き、必要に応じて改善していく。
そのプロセス自体が、プログラミングスキルを向上させる最良の方法なのです。
