「コードは1行も書いていない」Claude Code CLIだけでApp Store公開を実現した開発者の記録

「コードは1行も書いていない」Claude Code CLIだけでApp Store公開を実現した開発者の記録 AI

AIを使ったアプリ開発の可能性は、どこまで広がっているのでしょうか。

この疑問に対して、ある海外のRedditユーザーが興味深い答えを示してくれました。
プログラミング未経験ながら、Claude Code CLIだけを使ってiOSアプリをApp Storeに公開したのです。

本記事では、この事例から見えてくるAI駆動開発の実態について考察します。

「コードを1行も書かずに」アプリをリリース

Redditに投稿されたこの体験談が注目を集めています。

投稿者は、Swiftのチュートリアルを見ていません。
コーディングブートキャンプにも通っていません。

Claude Code CLIとの対話だけで、アプリを完成させました。
その成果は驚くべきものです。

Swiftコード3,000行以上を生成。
Firebaseによるバックエンド構築も実現しました。

さらに、リアルタイムデータ同期、Sign in with Appleの実装、アプリ内課金まで。
これらすべてが、AIとの会話を通じて作られたとのこと。

開発にかかったClaude利用料は約200ドルでした。
従来であれば、外部に発注すれば数十万円から数百万円かかっていたかもしれません。
そう考えると、この金額は驚くほど安いと言えるでしょう。

「魔法のプロンプト」は存在しない

投稿者が強調していたのは、1つの完璧なプロンプトで全てが解決するわけではないという点です。

実際のプロセスは、何百もの小さな会話の積み重ねでした。
「コーディングというより、映画監督のような仕事だった」と投稿者は表現しています。

問題が発生したら、その状況を説明する。
するとAIが原因を解説し、修正案を提示してくれる。
この繰り返しが開発プロセスの本質だったようです。

特に印象的だったのは、「スキルはプロンプティングではなく、何を聞くべきか知ることだ」という言葉。
AIに的確な質問を投げかける能力こそが、AI駆動開発における本当の技術なのかもしれません。

最大の難関はアプリ内課金だった

コメント欄では、アプリ内課金の実装について活発な議論が交わされていました。

ある開発経験者からは厳しい指摘がありました。
「アプリ内課金は複雑で、AIに任せきりでは危険ではないか」というものです。

決済処理はユーザーのお金に直結します。
そのため、エッジケースの処理が不十分だと大きな問題につながりかねません。

これに対して投稿者は、アプリ内課金が最も苦労した部分だと認めています。
実装の過程でAppleの審査に何度も拒否されたそうです。

しかし、この拒否が逆に学びの機会となりました。
拒否理由をClaudeに伝え、一緒にデバッグする。
そのプロセスを繰り返すうちに、コードへの理解が深まっていったとのこと。

興味深いのは、この「失敗からの学習」が従来のチュートリアル学習よりも効果的だったという点です。
実際の問題に直面し、その原因を解明するプロセスは、机上の学習では得られない深い理解をもたらします。

開発環境の意外な事実

もう1つ注目すべきは、Xcodeをほとんど使わなかったという証言です。

投稿者はxcodebuildをコマンドラインから実行しました。
ビルドからTestFlight配布、App Store提出まで、すべてターミナルから行ったそうです。

エラーが発生した場合のみXcodeを開いてデバッグしたものの、
基本的にはターミナルとClaude Code CLIだけで完結したとのこと。

コスト面についても言及がありました。
Swiftは無料。
Apple Developer Programは年間99ドル。
Firebaseは無料枠を利用。

投稿者はClaudeに「広告収益が増えた場合にのみ課金が発生するよう最適化してほしい」とリクエストし、
Firebaseの使用量も調整してもらったそうです。

コミュニティからの率直な反応

Redditらしく、コメント欄には厳しい意見も並んでいます。
「今やらなきゃいけないのはマーケティングだ。そうしないと5万個あるToDoアプリの1つで終わる」

この指摘は的を射ています。
実際、投稿者の収益は公開3週間で1.25ドル。
本人も「もうすぐリタイアできそう」と自虐的にジョークを飛ばしていました。

一方で、投稿者はこう反論しています。

以前はアイデアがあっても、それを形にできるかどうかで立ち止まっていた。
今は実際にアプリを作れるようになった。
だからマーケティングに集中できる。
最初のアプリは学習のため。
面白くなるのは次からだ

この視点は非常に重要です。
MVPを短期間・低コストで作れるようになったことで、アイデアの検証サイクルが劇的に短縮される可能性があるからです。

SaaSの活用という選択肢

別のコメントでは、RevenueCatのような外部サービスを使うアドバイスもありました。

このユーザーは自分でアプリ内課金を実装しようとして挫折したそうです。
しかしRevenueCatに切り替えたところ、スムーズに動作しました。

特にReact Native Expoでクロスプラットフォーム開発をしていた場合、
iOSとAndroid両方のアプリ内課金の複雑さを考えると、外部サービスの利用は賢明な選択と言えるでしょう。

「既存のSaaSで解決できる問題は、そちらに任せる」
この判断も、AI駆動開発における重要なスキルの1つです。

ユーザーからのフィードバック

実際にアプリをダウンロードしたユーザーからは、具体的なバグ報告もありました。

広告削除ボタンの価格表示に関する問題です。
特定の操作手順で価格が表示されない状態になるとの報告でした。
これに対して投稿者はすぐに修正リストに追加すると回答しています。

また「ファミリー共有プランを検討しては」という提案も受けました。
次回アップデートに含める意向を示していたことから、このようなフィードバックループが機能していることがわかります。

AI駆動開発がもたらす変化

この事例から見えてくるのは、ソフトウェア開発における役割の変化です。

従来、アプリ開発にはプログラミングスキルが必須でした。
しかし今、求められているのは別の能力です。

「何を作りたいか」を明確に伝える能力。
問題が発生した際に適切な質問を投げかける能力。
そしてビジネスとしての全体像を見渡す視点。

もちろん、これでプログラマーが不要になるわけではありません。
複雑なシステム設計、セキュリティの担保、パフォーマンスの最適化など、専門知識が不可欠な領域は数多く存在します。

しかし、「アイデアはあるがコードが書けない」という障壁は、確実に低くなっています。

注意すべきポイント

この事例を手放しで賞賛するのは早計かもしれません。
いくつかの懸念点も指摘されていました。

アプリ内課金のような重要な機能において、すべてのエッジケースを網羅できているかは不明です。
投稿者自身も「完璧ではないが、Appleの審査を通過し、実際に動いている」と認めています。
長期的な運用において問題が発生する可能性は否定できません。

また、コードの品質や保守性についても疑問が残ります。
AIが生成したコードを本人が完全に理解しているわけではありません。
そのため、将来的な機能追加やバグ修正で苦労する場面が出てくるかもしれないでしょう。

まとめ

Claude Code CLIを使ったiOSアプリ開発の事例は、AI駆動開発の現在地を示しています。

技術的なハードルは確実に下がりました。
200ドル程度の費用で、プログラミング未経験者がApp Storeにアプリを公開できる時代です。
これは数年前には考えられなかったことでしょう。

一方で、AIはあくまでツールに過ぎません。

何を作るか。
誰に届けるか。
どうビジネスとして成立させるか。

これらの問いに答えるのは、依然として人間の役割です。

投稿者の言葉を借りれば「これが今のビルディングの形だ」とのこと。
富を得るのはこれからの話だとしても、アイデアを形にする力が民主化されつつあることは間違いありません。

AIと協働する開発スタイルは、今後ますます一般的になっていくでしょう。
その流れの中で、私たちに求められるのは、AIを道具として適切に使いこなす能力です。
そして、人間にしかできない創造的な判断力なのかもしれません。

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