「プロンプト一発で同じことできるよね?」AI株式分析ツールが受けた洗礼

「プロンプト一発で同じことできるよね?」AI株式分析ツールが受けた洗礼 AI

先日、海外の掲示板で興味深い投稿を見かけました。

ある開発者が、株式分析に特化したDeep Researchツールを構築したというのです。
開発には数ヶ月を費やしたとのこと。

SECの提出書類や市場ニュース、業界専門誌を横断的に検索します。
そして、市場コンセンサスに反する情報を抽出してレポート化する仕組みだそうです。

この投稿に対するコミュニティの反応は、AIツール開発の現状を端的に物語っていました。

「それ、普通のプロンプトでできるよね?」という指摘

投稿に対して最も支持を集めたコメントは、辛辣なものでした。

Gemini Deep Researchに簡単なプロンプトを投げれば同じことができる。
それを有料で提供しようとしている

この指摘は的を射ています。

汎用AIの能力が急速に向上しました。
その結果、特定分野に特化したツールの価値が揺らいでいるのです。

以前なら専門的なシステムが必要だった処理も、
今ではChatGPTやGeminiへの適切な指示だけで実現できてしまいます。

別のユーザーも皮肉を込めてこう書いていました。

あなたと他の9999個のvibe codedプロジェクトが同じことをやっている

「vibe coded」とは、雰囲気だけで作られたプロジェクトを揶揄する表現でしょう。
AIを使えば誰でも似たようなツールを短期間で構築できます。
そんな時代になったことを示唆しています。

結果で証明せよ、という声

投資関連のツールに対しては、より厳しい目が向けられていました。

結果を見せてほしい。
そのツールを使った銘柄選定で、実際にどれだけ利益が出たのか。
本当に機能するなら、有料にする必要はない

この意見には説得力があります。

投資ツールの価値は、最終的にパフォーマンスで測られるからです。
理論的に優れたシステムでも、実績がなければ信頼は得られません。

一方で、開発者は「これはデイトレーダー向けではない」と回答していました。
どちらかというと、Seeking Alphaのような長期投資向けの分析プラットフォームに近いコンセプトのようです。

AIツールビジネスの本質的な課題

この事例は、AI活用ビジネスが直面する構造的な問題を浮き彫りにしています。

まず、差別化の難しさがあります。
基盤となるAIモデル自体が汎用的なため、その上に構築されるサービスも類似しがちです。
APIを叩いてプロンプトを調整するだけなら、技術的な参入障壁は極めて低いと言わざるを得ません。

次に、価値の証明という壁が立ちはだかります。
「AIが分析した」というだけでは、もはや訴求力を持ちません。

具体的にどのような独自データソースにアクセスできるのか。
どんな専門知識がシステムに組み込まれているのか。
そういった要素がなければ、汎用AIとの差別化は困難でしょう。

あるコメントでは、財務データの取得元について質問が出ていました。
開発者は「FMP」と回答しています。

FMPはFinancial Modeling Prepの略で、公開されている金融データAPIです。
つまり、データソース自体には特別な優位性がないことになります。

それでも可能性はある

否定的な意見が目立つ中、建設的なコメントもありました。

Seeking Alphaを現代化するのは面白いアイデアだ

確かに、既存の投資情報プラットフォームをAIで刷新する余地はあるはずです。
問題は、単なる情報収集・要約にとどまらない付加価値を提供できるかどうか。

例えば、以下のような方向性が考えられます。

ユーザー固有のポートフォリオに対するリスク分析があります。
市場の動向と保有銘柄の相関を継続的に監視し、パーソナライズされた洞察を提供するのです。

複数の情報源における矛盾点の検出も有効でしょう。
アナリストレポートと実際の財務データの乖離。
経営陣の発言と業績トレンドの不一致。
こうした人間が見落としがちなシグナルを捉えます。

時系列でのナラティブ変化の追跡という手もあります。
ある企業に対する市場の評価がどう変遷してきたか。

その転換点は何だったか。
これらを可視化するのです。

開発者へのアドバイスとして

この投稿から学べることは多いでしょう。

AIツールを構築して有料で提供しようとするなら、明確な説明が必要です。
「なぜ既存のAIに直接聞くより優れているのか」という問いに答えなければなりません。

データの独自性、ワークフローへの統合、専門知識の埋め込み。
何かしらの差別化要因が求められます。

また、投資分野では特に実績が重視されます。
バックテストの結果、実際の運用パフォーマンス、あるいは専門家からの評価。
何らかの形で有効性を示すことが、信頼獲得への第一歩となるでしょう。

まとめ

AIを活用した株式分析ツールの構築は、技術的には容易になりました。
しかし、それを価値あるサービスとして提供することのハードルは、むしろ上がっています。

汎用AIの性能向上により、「AIで○○を分析する」だけでは差別化になりません。
独自のデータソース、専門的な知見の組み込み、あるいは既存ワークフローとのシームレスな統合。

そうした要素が不可欠です。
なければ、「プロンプトを書けば同じことができる」という批判を覆すのは難しいでしょう。

この事例は、AIツール開発全般に当てはまる教訓を含んでいます。
技術的に作れることと、ビジネスとして成立すること。
これらは別の話なのです。

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