海外の掲示板Redditで、あるイラストが話題になっています。
死神に扮した「広告」が、YouTubeとGoogle検索を倒した後、次のターゲットとしてAIアシスタントに向かっていくという風刺画です。
この投稿には900件近いスコアと多くのコメントが集まりました。
AIサービスの将来に対するユーザーの懸念が、ここに凝縮されています。
プラットフォームが辿る共通のパターン
テクノロジー業界には、繰り返されるパターンがあります。
新しいサービスは最初、ユーザーにとって非常に便利な形で登場します。
利用者を獲得するために、企業は素晴らしい体験を提供するわけです。
しかし、ユーザー基盤が十分に大きくなると、収益化への圧力が高まります。
広告が少しずつ増えていく。
気がつけば、サービスの本質的な価値が損なわれている。
これはYouTubeでもGoogle検索でも起きたことです。
多くのユーザーが実際に体験してきた現象でしょう。
作家のコリー・ドクトロウは、この現象を「Enshittification(エンシティフィケーション)」と名付けました。
プラットフォームがまずユーザーを喜ばせる。
次にビジネス顧客を優遇する。
そして最終的には、自社の利益だけを追求するようになる。
このプロセスを指す言葉です。
YouTubeの変遷を振り返る
YouTubeの「Adpocalypse(広告の黙示録)」と呼ばれる現象は、多くのユーザーの記憶に新しいところです。
Redditのコメントでも、広告で始まる動画を見なくなったという声が複数ありました。
興味深いのは、YouTube Premiumに対する評価の分かれ方です。
「価値がある」と言う人もいます。
一方で、「プラットフォームを意図的に劣化させて課金を促しているだけだ」という批判もあります。
かつては無料で使えたバックグラウンド再生機能が、今や有料プランの特典になっている。
この指摘は的を射ていると言えるでしょう。
Google検索についても同様の懸念が示されています。
検索結果の上位がスポンサー広告で埋め尽くされている。
本当に探している情報にたどり着くまでスクロールが必要になった。
検索エンジンの本質的な価値である「情報へのアクセス」が、収益化によって阻害されているのです。
AIアシスタントは同じ道を辿るのか
OpenAIが広告導入を検討しているという報道は、多くのユーザーを不安にさせました。
Redditのコメントには「お願いだからこれが現実にならないで」という切実な声もあります。
ただし、Reuters(ロイター通信)の報道によると、OpenAIは現在、広告関連の施策を一時停止しているようです。
これは「code red(緊急事態)」メモに基づく判断とのこと。
少なくとも当面は、広告導入が見送られる可能性があります。
とはいえ、企業が収益を上げなければならないという現実は変わりません。
あるコメントでは、有料プランでも軽い広告が入る可能性を予測していました。
対話の流れを妨げない程度のバナー広告であれば、導入されるかもしれないという見立てです。
ユーザーが取れる対策
コメント欄では、いくつかの対策が議論されていました。
ローカルLLMの活用
自分のコンピューター上で動作する言語モデルを使えば、広告の心配はありません。
ただし、高性能なハードウェアが必要です。
誰でも気軽に選択できる方法ではないでしょう。
カスタムGPTやAPIの活用
皮肉めいたコメントとして、「GPTに広告ブロッカーを作らせればいい」という声もありました。
カスタムGPTを作成して広告コンテンツを除去する。
あるいは、API経由で独自のチャットインターフェースを構築する。
技術に詳しい人にとっては、現実的な選択肢かもしれません。
広告ブロッカーの活用
YouTubeやGoogle検索については、uBlock Originのようなツールで広告を回避できます。
ただし、AIアシスタントの場合は事情が異なります。
広告がレスポンスに組み込まれる形になると、従来の広告ブロッカーでは対処が難しくなる可能性があります。
有料ユーザーの懸念
興味深いのは、すでに有料プランを利用しているユーザーの反応です。
月額20ドルを支払っているにもかかわらず、将来的に広告が表示されるかもしれない。
そんな不安を抱えています。
あるコメントでは、企業の行動パターンについて鋭い指摘がありました。
過去6ヶ月のOpenAIの動きを見ると、ユーザーの声に必ずしも敏感ではないというのです。
人気モデルの廃止や、ルーティング動作の変更など、ユーザーの反発を招く決定がいくつかあったとのこと。
また、別の懸念も示されています。
広告機能の開発にリソースが割かれると、新機能やバグ修正がおろそかになるのではないか。
企業にとって広告は継続的な収益源となるため、優先順位が高くなりがちです。
一方、既存の有料ユーザーへのサービス向上は後回しにされる可能性があります。
歴史は繰り返すのか
「Yahoo!を覚えているか?最初に登場したものが最後まで残るとは限らない」
こんなコメントがありました。
検索エンジンの歴史を振り返ると、AltaVistaやYahoo!が覇権を握っていた時代がありました。
しかし、Googleがより良い検索体験を提供した。
そして、あっという間に市場を席巻したのです。
同じことがAIアシスタントの世界でも起きるかもしれません。
ChatGPTが広告だらけになれば、ユーザーは代替サービスを探すでしょう。
競合他社にとっては、これはチャンスとも言えます。
ただし、楽観的すぎる見方には注意も必要です。
あるコメントでは「歴史は繰り返さない、韻を踏むだけだ」という言葉が引用されていました。
同じパターンが繰り返されるように見えても、状況は常に少しずつ異なります。
AIアシスタント市場の特殊性を考慮する必要があるでしょう。
見えない広告という可能性
気になるコメントがありました。
「広告はすでに存在している、ただ気づいていないだけだ」という指摘です。
AI SEO(AIの回答に影響を与えるための最適化)という概念が言及されていました。
これは興味深い観点です。
従来のバナー広告やスポンサードコンテンツとは異なります。
AIの回答に特定のブランドや製品が自然に組み込まれる可能性がある。
プロンプトの結果に影響を与える形で、気づかないうちに広告に触れているかもしれません。
まとめ
AIアシスタントに広告が導入されるかどうかは、まだ確定していません。
しかし、プラットフォームが辿ってきた歴史を見ると、同様のパターンが繰り返される可能性は十分にあります。
ユーザーとして、私たちにできることがあります。
まず、代替手段を把握しておくこと。
ローカルLLMやAPIアクセスなど、技術的な選択肢を理解しておけば、いざというときに対応できます。
また、サービスの変化に敏感でいることも大切です。
使い勝手が悪化したと感じたら、フィードバックを送る。
代替サービスを検討する。
そうすることで、市場に声を届けられるのです。
最終的には、企業がユーザー体験と収益化のバランスをどう取るかにかかっています。
過去の事例を見る限り、楽観的になりすぎるのは危険かもしれません。
しかし、競争が激しい市場では、ユーザーを軽視する企業は淘汰されていく可能性もあります。
私たちは、この変化を注意深く見守っていく必要があるでしょう。
