8GBのメモリを200MBに圧縮!PDFを動画に変換する驚きのベクトルDB構築法

8GBのメモリを200MBに圧縮!PDFを動画に変換する驚きのベクトルDB構築法 プログラミング

RAGシステムを構築していたある開発者が、興味深い発見をしました。

PDFを検索するためにベクトルデータベースを使っていたところ、8GBのメモリがあっという間に消えてしまったのです。
さらに、クラウドサービスに150ドルも支払うことになりました。

そこで彼は、突拍子もないアイデアを思いつきます。
「ドキュメントを動画ファイルにエンコードしたらどうだろう?」

なぜ動画なのか

一見すると意味不明なアプローチに思えます。
テキストデータを動画として保存する理由なんてあるでしょうか。

しかし、現代の動画コーデックは数十年にわたる最適化の結晶です。
圧縮効率に関しては、他の追随を許さないレベルに達しています。

この開発者は、次のようなアプローチを取りました。
まず、テキストをQRコードに変換します。

次に、それを動画のフレームとしてエンコードします。
そして、H.264やH.265といった動画圧縮技術に、データ圧縮を任せるのです。

驚くべき結果

実装の結果は予想以上でした。
10,000個のPDFファイルが、たった1.4GBの動画ファイルに圧縮されたのです。

検索速度を比較してみましょう:

  • Pinecone:820ミリ秒
  • このシステム:900ミリ秒

約10%遅い程度で済んでいます。

最も印象的なのはRAM使用量の削減です。
8GB以上使っていたメモリが、わずか200MBまで減少しました。

さらに、完全にオフラインで動作します。
APIキーも月額料金も必要ありません。

技術的な仕組み

仕組み自体はシンプルです。

まず、各ドキュメントのチャンクをQRコードに変換します。
次に、それらを動画のフレームとして保存します。
動画圧縮は、類似したドキュメント間の冗長性を効率的に処理してくれるのです。

検索時はどうでしょうか。
軽量なインデックスを使って関連するフレーム範囲を特定します。

そして、必要な部分だけをデコードします。
結果として、どこにでもコピーできる単一の動画ファイルがベクトルデータベースとして機能するわけです。

批判と議論

このアプローチには当然ながら疑問の声も上がっています。

単純にzipで圧縮すれば良いのでは?

確かに一理あります。
QRコードは冗長性が高く、カメラで読み取れるように設計されています。
そのため、純粋なデータ保存には非効率な面があるのです。

また、別の懸念も示されています。
すべてのフレームをデコードしてQRコードを認識する必要があるため、検索が遅くなるのではないか。

SQLiteのようなデータベースを使えば、もっと効率的に実装できるのではないか。
こうした意見も、もっともです。

実験の価値

しかし、この実験には重要な価値があります。

時にはメモリよりもCPUに余裕がある状況もあります。
逆に、CPUよりもメモリに余裕がある場合もあるでしょう。

制約の中で最適解を見つけること。
それがエンジニアリングの本質です。

さらに興味深い可能性もあります。
H.264/H.265専用に最適化されたハードウェア機能を活用できるかもしれません。

従来のデータ構造では利用できない、新しいパフォーマンス向上の道が開けるのです。

技術的な改善の余地

改善の余地はまだあります。
生のバイト列を使って独自のトランスレーターを構築すればどうでしょう。

データサイズを半分から3分の1にまで削減できる可能性があります。
QRコードの大量の冗長性を排除できるからです。

また、別のアプローチも考えられます。
類似したドキュメントを事前にソートしてから動画化すれば、圧縮率はさらに向上するでしょう。

なぜなら、動画コーデックは時間的な連続性を前提に設計されているからです。
類似フレームを連続させることで、効率が上がります。

まとめ

動画圧縮を使ったベクトルデータベースという発想は、確かに型破りです。
実用性について議論の余地はあります。

しかし、既存の技術を意外な方法で組み合わせる創造性には価値があります。

このプロジェクトは、私たちに重要な教訓を与えてくれます。
問題解決には常に複数のアプローチが存在します。

そして、時には常識を疑うことで新しい可能性が開けるのです。

完璧な解決策でなくとも、制約の中で工夫を凝らすことに意味があります。
実験を重ねることで、思いもよらない発見につながることがあります。

それこそが、エンジニアリングの醍醐味なのかもしれません。

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