Javaは好きだけど、メモリ使用量が気になる。
Golangに乗り換えるべきだろうか。
こんな悩みを抱えるエンジニアは少なくありません。
実際、Redditの開発者コミュニティでもこのテーマは定期的に議論されています。
本記事では、その議論から見えてきた真実と実践的な対処法を整理してみました。
なぜメモリ使用量が気になるのか
クラウドネイティブ時代において、メモリ使用量への関心が高まっています。
これは自然な流れでしょう。
サーバーレス環境を考えてみてください。
256MBのインスタンスと1GBのインスタンスでは、料金が数倍も違います。
マイクロサービスアーキテクチャを採用すると、さらに深刻です。
「たった10倍のメモリ使用量」が10個、100個のサービスに掛け算されていくからです。
ペットプロジェクトを4GBのVMで複数動かしたい。
そんな場合、Spring Bootアプリケーションを何個もデプロイするのは現実的ではないかもしれません。
一方で、こんな反論もあります。
「なぜメモリ使用量だけで言語を変えようとするのか?」と。
JVMのメモリ管理を正しく理解する
議論の中で繰り返し指摘されていたのは、JVMのメモリ管理に対する誤解です。
JVMは「使用したメモリ量」を表示しているわけではありません。
JVMに1GBを割り当てれば、たとえ実際には200MBしか必要なくても、OSからは1GBを使用しているように見えます。
これはJVMの設計によるものです。
ガベージコレクションの効率を上げるために、ヒープを広く確保しているのです。
つまり、JVMは「あなたが指示した分だけ」メモリを使用します。
デフォルト設定では、マシンのRAMの約25%を使おうとする。
何も設定しなければ、8GBのマシンで2GB近くを確保してしまうかもしれません。
解決策は単純です。
-Xmsと-Xmxオプションで適切なヒープサイズを指定すればいい。
CPU使用率が低い小さなPodで動かすなら、メモリも少なく設定すべきです。
なぜなら、メモリ割り当てにはCPUが必要だから。
CPUが少ないなら割り当て速度も遅くなります。
ある開発者はこう説明しています。
同じJavaプログラムが200MBで動くこともあれば、1.5GBで動くこともある。 それは単にどう起動したかの違いだ
「開発者は機械より高い」という神話
「メモリは安い。開発者の時間のほうが高い」
この主張はよく聞きます。
しかし、反論も存在します。
開発コストと運用コストを比較するのは、リンゴとオレンジを比べるようなものだという指摘です。
開発は一回限りのコストです。
適切にメンテナンスすれば、初期開発コストの割合は時間とともに小さくなっていく。
しかし運用コストは違います。
サービスが動いている限りずっと発生し続けます。
ユーザー数やテナント数に応じて増加することも。
1年の開発よりも、10年間のクラウド運用費用のほうが高くつくケースは珍しくありません。
とはいえ、これは規模によります。
数百TBのデータを扱い、秒間数百万リクエストを処理するようなサービス。
そういった環境では、メモリ効率が請求額に直結するでしょう。
年間数百万ドルのクラウド費用を払っているなら、最適化チームを組む価値があるかもしれません。
しかし、多くのプロジェクトではそこまでの規模に達しません。
4GBのEC2インスタンスは月額25ドル程度です。
開発者の時給が50ドルなら、Golangへの移行で30分以上余計に時間がかかれば経済的には逆効果になります。
実践的な解決策
メモリ使用量を減らしたいなら、言語を変える前に試すべきことがあります。
プロファイリングから始める
あるJavaエキスパートはこう断言しています。
「効率的なプログラムと非効率なプログラムの最大の違いはプロファイリングだ」と。
プロファイルされたプログラムは通常効率的です。
プロファイルされていないプログラムは通常非効率。
フレームワークを変えても言語を変えても、プロファイリングなしでは同じ場所に行き着くだけです。
ヒープダンプを取得して、実際に何がメモリを消費しているのか確認しましょう。
VisualVMやMission Controlを使えば、リテインドサイズを計算できます。
GCログを有効にして、ライブセットのサイズを追跡するのも有効な手段です。
軽量フレームワークの検討
Spring Bootは確かに便利です。
しかし、メモリフットプリントは小さくありません。
コミュニティでは、いくつかの代替案が繰り返し推奨されていました。
Quarkus
Red Hatが開発したフレームワークで、ネイティブイメージとの相性が良い。
Spring Bootの半分程度のリソースで動作するという報告もあります。
Micronaut
同様に優れた選択肢です。
コンパイル時にDIを解決することで、ランタイムのオーバーヘッドを削減しています。
Helidon SE
40MB未満のメモリで動作するアプリケーションを作ったという報告も。
Javalin
軽量HTTPフレームワークも選択肢に入るでしょう。
GraalVMネイティブイメージ
AOT(Ahead-of-Time)コンパイルは、メモリ使用量削減の切り札になりえます。
QuarkusやSpring Boot 3のネイティブイメージ機能を使えば、大幅な削減が期待できます。
JVMモードで500MBだったアプリケーションが180MB程度まで削減できることも。
起動時間も大幅に短縮されるため、サーバーレス環境でのコールドスタート問題にも対処できます。
ただし、注意点もあります。
- ネイティブイメージのビルドには時間がかかる
- 古いライブラリとの互換性問題が発生することがある
- ランタイムリフレクションに依存するコードは、追加の設定が必要になるケースがある
Virtual Threads(Java 21以降)
Java 21で正式導入されたVirtual Threadsは、スレッドあたりのメモリ消費を劇的に削減します。
従来のプラットフォームスレッドは、1スレッドあたり約1MBのスタックメモリを消費していました。
Virtual Threadsではこれが大幅に小さくなります。
同時接続数が多いアプリケーションでは、メモリ使用量が顕著に改善するはずです。
あるコメントでは「Java 21以降ではVirtual Threadsがあるので、Goよりも効率的にスレッドを扱える」という主張もありました。
問題の本質はどこにあるか
興味深い指摘がありました。
「これはJavaやJVMの問題ではなく、Springやその他の重いフレームワークの問題だ」という見解です。
Javaエコシステムは長らく「リソースは気にしなくていい」という前提で発展してきました。
ランタイムリフレクション、間接参照、動的コード生成。
これらは開発者体験を向上させる一方で、メモリフットプリントを押し上げてきたのです。
しかし状況は変わりつつあります。
MicronautやQuarkusのように、コンパイル時にコード生成を行うフレームワークが登場しました。
Springも最近では、ランタイムコード生成からビルド時生成への移行を進めています。
Project Leydenなど、JDK自体の最適化も続いています。
GoやRustに移行すべきか
Golangに移行すれば確かにメモリ使用量は減るかもしれません。
しかし、投稿者が指摘していたように、開発体験は大きく異なります。
Golangでアプリケーションを作ったが、開発体験には本当に失望した。 Spring Bootは確かにブロートしているが、問題解決に集中できる。 Golangではフレームワークを自分で再発明している気分になる
Javaは表現力とシンプルさのバランスが取れた言語だという評価がありました。
Goはシンプルすぎて、一部の開発者には物足りなく感じる。
もちろん、適切な場面はあります。
大規模なマルチテナントクラウドデータベースのような領域では、C++やRust、Zigのほうが適しているケースも。
しかし、その判断は実測値に基づいて行うべきでしょう。
Googleは自社開発したGoよりもJavaを多く使用しているという指摘もありました。
世界最大級のサービスを運営する企業がJavaを選んでいる。
これは、メモリ使用量が決定的な問題ではないことの証左かもしれません。
組織的な問題
議論の中で見過ごせない指摘がありました。
JVMの設定は開発者が行うべきだという意見です。
DevOpsチームはJava開発者ではありません。
アプリケーションのパフォーマンス特性を知らないし、プロファイリングもできない。
しかし、開発チームとDevOpsチームの間に壁があると、JVMの設定がデフォルトのまま放置されがちです。
「会社のDevOpsは縄張り意識が強くて、アプリケーション開発者からの設定提案を受け入れない。機能不全だ」という声もありました。
これはJavaの問題ではありません。
組織の問題です。
対策はあります。
Dockerイメージに適切なJVMオプションを焼き込む。
あるいは、Spring Boot BuildpacksのJava Memory Calculatorのような自動設定ツールを活用する。
こうした方法で、この問題は軽減できます。
まとめ
Javaのメモリ使用量は確かに他の言語より多い傾向にあります。
しかし、それが本当に問題になるかどうかは、ユースケースと設定次第です。
多くの場合、メモリ問題は以下のいずれかに起因しています。
- JVMの設定が不適切(デフォルトのまま、またはCPUに見合わない設定)
- 重いフレームワークの使用(代替手段を検討していない)
- プロファイリングの欠如(何がメモリを消費しているか把握していない)
言語を変える前に、まずこれらを見直してみてください。
QuarkusやMicronautへの移行、GraalVMネイティブイメージの活用、適切なヒープサイズの設定。
これらの対策で、多くの場合は十分な改善が見込めます。
それでも解決しない場合はどうするか。
あるいは数百万ドル規模のクラウド費用を払っているような場合は、言語変更を検討する価値があるかもしれません。
ただし、Goに移行して開発効率が下がれば、インフラコストの削減分を相殺してしまう可能性も忘れないでください。
プログラミング言語の選択は、単一の指標で決められるものではありません。
メモリ効率、開発効率、チームのスキルセット、エコシステムの成熟度。
これらを総合的に判断して、自分のプロジェクトに最適な選択をしましょう。
