Redditの r/ChatGPT サブレディットで、ある投稿が多くのスコアを獲得して話題になっていました。
内容は「3ヶ月かけて100個以上のプロンプトをテストした結果、毎日使っているのはこの7つだけ」というもの。
正直、この手の投稿はRedditに溢れています。
「最強プロンプト○選」系の記事は、そのほとんどが表面的な内容で終わりがち。
でも今回の投稿は、コメント欄での議論も含めて読み応えがありました。
本記事では、元投稿の7つのプロンプトを紹介します。
加えて、コメント欄から拾った改善点や批判的な視点も織り交ぜて解説していきます。
「お世辞抜き」フィードバックプロンプト
ChatGPTに何かを見せると、たいてい褒めてくれます。
「素晴らしいアイデアですね!」と返ってくる。
気分は良いけれど、役には立ちません。
投稿者が紹介していたのは、AIに「20年の経験を持つ辛口コンサルタント」というロールを与えるプロンプトでした。
自分のビジネスアイデアや企画書の弱点を徹底的に指摘させます。
ポイントは「礼儀は不要」と明示すること。
そして問題点を洗い出したあと、優先順位付きの改善プランまで求める構成です。
投稿者いわく、このプロンプトのおかげで「ひどいランディングページを公開せずに済んだ」とのこと。
コメント欄では、興味深い改良案が出ていました。
あるユーザーが「問題と解決策を分離させる」ことを提案しています。
具体的には、最初に問題点だけを列挙させる。
解決策はその後で別途出させる。
AIは批判をすると同時に救済策を添えがちです。
だからこそ、この分離によって「診断」の精度が上がるという指摘でした。
コードレビューにも応用できるそうです。
バグを先に列挙させてから修正案を出させると、パターンを学びやすくなるとのこと。
一方で、別のユーザーは「辛口フィードバックを頼んだら台所の床で泣くことになった」と冗談を投稿。
笑い話ですが、AIからの容赦ないフィードバックに耐えるメンタルも必要なのかもしれません。
「20分で何でも学ぶ」プロンプト
新しいトピックを短時間で理解したいとき、段階的な説明構造をAIに指示するプロンプトです。
投稿者の構成はこうなっていました。
まず15歳にもわかる3文の説明。
次に専門家レベルのニュアンス解説。
そこから実例を3つ、よくある誤解を3つ。
さらに深掘りしたい場合の次のステップ。
この5段階で1つのトピックを網羅的に把握させる仕組みです。
投稿者はブロックチェーン、オプション取引、認知行動療法をこの方法で学んだと述べていました。
特に「誤解」セクションの精度が高いとのこと。
ただし、コメント欄には冷静なツッコミも。
「15歳が理解できるレベルの情報だけで構成される世界に暮らすのは勘弁してほしい」という意見が支持を集めていました。
これは核心を突いています。
20分の概要把握と、深い理解はまったくの別物です。
このプロンプトは「入門」には最適でしょう。
しかし、それで何かを「理解した」と思い込むのは危険です。
競合分析プロンプト
競合企業の名前(できればURLも)を渡して、公開情報をもとに戦略ブリーフィングを作らせるプロンプトです。
分析項目は以下の5つ。
- ターゲット層の推定
- ポジショニングと独自の価値提案
- コンテンツ戦略の傾向
- 価格設定の心理
- 攻略可能な弱点を3つ
投稿者は4社の競合に対してこれを実行しました。
そして、どの競合もカバーしていない市場のギャップを発見したと語っています。
投稿者は「5,000ドルのストラテジストがポケットにいる感覚」と表現していました。
もちろん大げさではあります。
しかし、公開情報の整理と構造化という点で、AIの得意分野を的確に突いたプロンプトだと感じました。
注意点が1つ。
AIは公開情報のみを分析対象にします。
内部事情や非公開データに基づく分析は不可能です。
あくまで仮説の出発点として使うのが現実的でしょう。
「一人マーケティング部門」プロンプト
ソロクリエイターや小規模ビジネスの運営者にとって、マーケティングは大きな課題です。
このプロンプトは、AIにマーケティング戦略家・コピーライター・コンテンツプランナーの3役を同時に担わせるもの。
製品情報、ターゲット層、価格帯を伝えた上で、以下を一括で出力させます。
- 7日間のSNS投稿(すぐに使える完成形)
- 2種類のメールシーケンス
- ショート動画のフック案3つ
- 30日間のコンテンツカレンダー
投稿者は「具体的な文脈を十分に与えるのがカギ」と強調していました。
この点は重要です。
コメント欄でも関連する指摘がありました。
「ChatGPTのシステムには限界がある。こちらの意図を超えて、AIが良いと判断した方向に引っ張られることがある」というもの。
文脈が薄いと、どうしても汎用的な出力になってしまいます。
自分のビジネスに関する具体的な情報をどれだけ盛り込めるか。
それがこのプロンプトの成否を分けるわけです。
意思決定支援プロンプト
迷ったときにAIを戦略アドバイザーとして使うプロンプトです。
投稿者が求めた出力は5つ。
1つ目は、選択肢の列挙。
自分が思いつかなかったものも含みます。
2つ目は、各選択肢のベスト・ワースト・最も可能性の高いシナリオの分析。
3つ目は、自分の説明文から読み取れるバイアスの指摘。
4つ目が最終的な推奨案。
そして5つ目が「自分が問いかけるべきなのに問いかけていない質問」の提示です。
投稿者が特に評価していたのは、この5つ目でした。
「見えていない盲点をAIが教えてくれる」という体験が衝撃的だったようです。
この「問いかけていない質問」というアプローチは、プロンプト設計の中でもかなり秀逸な発想だと思います。
人間は自分の思考の枠組みの中でしか質問を考えられません。
その枠組み自体を外から揺さぶる役割をAIに担わせる。
この考え方は、他の場面にも応用が利くはずです。
コンテンツ再利用プロンプト
1つのブログ記事やスクリプトから、複数プラットフォーム向けのコンテンツを一括生成させるプロンプトです。
出力先はX(旧Twitter)スレッド、LinkedIn投稿、Instagramキャプション、ショート動画スクリプト3本、メールマガジン版。
ポイントは「各プラットフォームにネイティブな形式で」と指示すること。
単純なコピペではありません。
それぞれのメディアに適した口調や構成で再構築させます。
投稿者は毎週これを使い、1本のブログから7本以上のコンテンツを生み出しているとのこと。
コメント欄では、ある皮肉屋のユーザーが「このプロンプト自体が『コンテンツ再利用プロンプト』を使って作られた投稿にしか見えない」と突いていました。
Redditらしい辛辣さです。
しかし一理あります。
AIで大量生産されたコンテンツが溢れる時代に、量と質のバランスをどう取るか。
各自が考えるべき課題でしょう。
「第二の脳」整理プロンプト
雑多なメモ、音声メモの書き起こし、散らばったアイデアの断片。
こういった素材をAIに投げて整理させるプロンプトです。
AIに求めるタスクは以下の5つ。
- テーマごとのグループ化
- 雑な箇条書きを明確なアクション項目に変換
- 重要アイデア3つの抽出と、その理由の説明
- アイデア間の意外なつながりの発見
- 後から参照できるクリーンな要約の作成
投稿者は毎週金曜に、1週間分の雑多なメモをこのプロンプトに流し込んでいるそうです。
「カオスが30秒でクリアになる」と表現していました。
このプロンプトの価値は、単なる整理にとどまらない点にあります。
「アイデア間のつながりを発見させる」。
これは、先述の意思決定プロンプトにおける「問いかけていない質問」と同じ発想です。
人間の認知の限界を、AIの網羅的な分析能力で補完する。
そういった考え方が根底に流れています。
コメント欄から見える本質的な論点
この投稿のコメント欄では、賞賛だけでなく鋭い批判もいくつか出ていました。
最もスコアが高かったコメントは「Geminiに『こんな感じのプロンプトを40個作って』と頼むだけ」という一言。
つまり、これらのプロンプト自体がAIで量産可能だという指摘です。
「Dead Internet Theory(死んだインターネット理論)そのものだ」というコメントも象徴的でした。
AIが書いた文章をAIが分析し、AIが再構成する。
この循環に対する不安が、ユーモアの形で表出しています。
一方で、実体験を共有するユーザーもいました。
不動産管理の上級職にあるというそのユーザーは、こういったプロンプトを日常業務で使っていると述べています。
AIのおかげで生産性が上がり、30%の昇給にもつながったとのこと。
使い方次第で道具は化ける。
当たり前だけど忘れがちな事実です。
また、「プロンプトなんかより、AIにフレンドリーに話しかけるほうがよっぽど良い結果が出る」という意見も印象的でした。
型にはまったプロンプトよりも、自然な対話を重視するアプローチ。
プロンプトエンジニアリングの議論で見落とされがちな視点です。
この7つのプロンプトから学べること
個々のプロンプトの中身よりも、共通する設計思想に注目する価値があります。
まず、すべてのプロンプトがAIに明確な「役割」を与えています。
コンサルタント、教師、戦略アドバイザー。
漠然と質問するのではなく、専門家としての立場を定義する。
それだけで出力の質が変わります。
次に、出力のフォーマットを細かく指定している点です。
「3つ挙げて」「優先順位をつけて」「ベスト・ワースト・最も可能性の高いシナリオで」。
こうした具体的な構造の指定が、汎用的で曖昧な回答を防いでいます。
そして最も重要なのは、AIの強みを正しく理解している点でしょう。
これらのプロンプトは、AIに創造性を求めていません。
求めているのは、情報の整理、構造化、網羅的な分析、多角的な視点の提示。
AIが得意とする領域に絞って活用しているのです。
まとめ
完璧なプロンプトなど存在しません。
自分の仕事や目的に合わせてカスタマイズし、試行錯誤を重ねる。
その過程そのものに意味があります。
今回紹介した7つのプロンプトは、そのまま使うものというよりも「こういう設計思想でプロンプトを組めばいいのか」という気づきを得るための素材です。
そう捉えてみてください。
そしてRedditのコメント欄が教えてくれたように、最終的にはツールの使い手自身のリテラシーが問われます。
AIの出力を鵜呑みにせず、批判的に評価し、自分の文脈に落とし込む。
その姿勢がある限り、プロンプトは強力な武器になるはずです。
