18倍速のPolarsは本当にPandasを置き換えるのか?

18倍速のPolarsは本当にPandasを置き換えるのか? プログラミング

Pythonでデータ処理を行う際、長らくPandasが定番ライブラリとして君臨してきました。
しかし2026年現在、Polarsという新しい選択肢が急速に存在感を増しています。

本記事では、Redditの r/Python コミュニティに投稿された「Polars vs pandas」というスレッドの議論を参考にしています。
この議論をもとに、両者の違いと選び方について整理していきます。

速度差は想像以上に大きい

Redditの議論で最も注目を集めたのが、速度に関する報告でした。

あるユーザーは、4GBのCSVファイルをパースした結果を共有しています。
PolarsはPandasの約18倍速かったそうです。

しかもPolarsを使ったのはそれが初めてだったとのこと。
初回利用でこれだけの差が出るのは印象的ですよね。

この速度差には技術的な裏付けがあります。
PolarsのエンジンはRustで実装されています。

そのため、Python側はいわばSQLのように「指示を出す役割」に徹する形です。
つまり、Pythonのランタイムがボトルネックにならない構造になっています。

別のユーザーの報告も興味深いものでした。
Perconaベースで実装されていた既存ツールをPolarsで書き直したところ、80倍の高速化を達成したそうです。

もちろんC言語やRustで自前実装すれば同じ速度は出せるでしょう。
しかし、その開発コストに見合うかどうかは別の話です。

データベース経験者にはPolarsのほうが馴染みやすい

元の投稿者はデータベース開発の経験者でした。
そこからPythonのエコシステムに入ろうとしていたようです。

この背景に対して、複数のユーザーがPolarsを推薦しています。
その理由は明確です。

Polarsには「遅延評価(Lazy Evaluation)」の仕組みがあります。
操作をすぐ実行するのではなく、一連の操作をまとめてから最適化して実行する方式です。
これはSQLのクエリプランナーと似た考え方になります。

具体的には、Polarsのlazy APIを使うと、操作をチェーンして積み上げていきます。
そして最後にcollect()で実行します。

この時点で不要な計算の削除や操作順序の最適化が自動的に行われるわけです。
SQLに慣れたエンジニアなら、このワークフローは自然に感じるでしょう。

さらにPolarsにはSQLインターフェースも用意されています。
APIの学習コストが気になるなら、まずSQL経由で使い始めるという手もあります。

Pandasが依然として必要なケース

議論の中では、Polarsへの全面移行が難しいケースも挙げられていました。

最も多く言及されたのがGIS(地理情報システム)です。
GeoPandasは空間データ処理の分野で広く使われています。

しかし、Polars側の同等ライブラリであるGeopolarsは開発が不安定な状態にあります。
一時期リポジトリに動きがあったものの、再び停滞しているとの報告もありました。
GISが主な用途であれば、当面はPandasを使い続けるのが現実的でしょう。

また、Pandasのファイルリーダーの柔軟性を評価する声もありました。
あるユーザーは、読み込み時だけPandasを使い、直後にPolarsへ変換するという運用を紹介しています。

ただし、この方法には変換オーバーヘッドが発生します。
可能であれば最初からPolarsで統一するほうが効率的です。

Windows ARM環境での問題も報告されていました。
PolarsからExcelファイルを読む際、fastexcelライブラリのホイールが未提供だということです。

この場合は pl.read_excel(…, engine=”openpyxl”) でエンジンを切り替えれば回避できるとのことでした。

面接・転職市場での事情

技術的にはPolarsが優位です。
しかし、採用面接となると話が変わります。

あるユーザーは昨年だけで12回以上の面接を受けたそうです。
そのすべてでPandasの使用を求められたと証言しています。

一方で、面接官側の視点を持つ別のユーザーの意見は異なりました。
「Polarsで書かれた読みやすく高速なコードを不正解とするケースは想像できない」と語っています。

現時点では、面接対策としてPandasの知識は依然として重要です。
ただし、この状況は今後数年で変わっていくと予想する声が多く見られました。

DuckDBという第三の選択肢

議論の中で繰り返し登場したのがDuckDBです。
特にデータベース開発の経験者にとっては、SQLをそのまま使える点が魅力でしょう。

ある職場での運用例が参考になります。
DuckDBをローカルマシンでの変換処理やファイル結合に使い、単一データセットの操作にはPandasを併用しているとのことです。
メモリに収まらないデータはParquetファイルに落とし、DuckDBで結合する流れになっています。

PolarsとDuckDBの使い分けも紹介されていました。
新規開発にはPolarsを、SQLが必要な場面ではDuckDBを採用するという組み合わせです。
両者は競合というよりも補完関係にあるといえます。

実務での採用状況

「Polarsは実務で使われているのか?」という質問も出ていました。
これに対して、複数のユーザーが肯定的に答えています。

あるユーザーは新規開発のすべてでPolarsを採用しているそうです。
DuckDBと組み合わせて運用しているとのこと。
パフォーマンスの高いライブラリを使うことで、カスタムC++コードの必要性を大幅に減らせているといいます。

一方で、業界によって事情は異なります。
大手PE(プライベートエクイティ)企業のクオンツ開発者からは、リサーチやモデリングの標準はいまだPandasだという声もありました。
パフォーマンスが必要な場面ではC++で書くそうです。

結局、どちらを学ぶべきか

Redditの議論全体を通して浮かび上がるのは、「両方学んで、Polarsを優先する」というコンセンサスです。

Pythonのエコシステムは「どちらか一方に賭けて、もう片方に二度と触れない」という世界ではありません。
プロジェクトごとにライブラリを選定し、仮想環境で管理するのが基本的な作法です。

とはいえ、2026年の時点で新規プロジェクトを始めるなら、Polarsを第一候補にするのが合理的でしょう。
速度、構文の一貫性、メモリ効率のいずれにおいてもPolarsに優位性があります。

一方でPandasの知識も依然として価値があります。
既存コードの保守や面接対策、他のライブラリとの相互運用で必要になるためです。
学んでおいて損はありません。

まとめ

Polarsは速度面だけでなく、構文のわかりやすさや遅延評価による最適化でも高い評価を受けています。
データベース経験者にとっては特に親和性が高いといえるでしょう。

ただし、GeoPandasのような特定領域への対応はまだ発展途上です。
また、面接市場ではPandasの知識が依然として求められる場面も少なくありません。

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