SaaS開発でフレームワーク選びに悩む開発者は多いでしょう。
特に大量のトランザクション処理やAI統合が必要な場合です。
このような状況では、どちらを選ぶべきか判断が難しくなります。
最近のRedditで、まさにこの問題に直面している開発者の投稿が注目を集めました。
今回はその議論から得られた実践的な知見を整理してお伝えします。
実際の開発現場で直面する選択
ある開発者が、特定の要件を持つSaaSプロジェクトでフレームワーク選択に悩んでいました。
その要件は以下の通りです:
- 大量のトランザクション処理が必要
- AI駆動のコミュニケーション機能を実装する
- 複数の外部APIとの連携が不可欠
- 現在はFastAPI + SQLAlchemy + Alembicで開発中
この状況、多くの開発者が共感できるのではないでしょうか。
パフォーマンスの実態:数字で見る現実
「大量のトランザクション」と聞くと、すぐにパフォーマンスを心配してしまいがちです。
しかし実際のところ、どの程度の規模なのでしょうか。
投稿者の場合、初期段階では1日あたり4,000〜5,000件のトランザクションを想定していました。
これはB2Bサービスとしては現実的な数字です。
経験豊富な開発者からのコメントが興味深い内容でした。
「Djangoプロジェクトで秒間3,500リクエストを処理している」という実例が共有されたのです。
さらに驚くべきは、月額75ドル程度のハードウェアで実現しているという点。
HTTP、NATS、Celery、Kafkaを組み合わせた構成を使用しているそうです。
つまり、1日5,000件程度なら問題ありません。
DjangoでもFastAPIでも余裕で処理できるレベルなのです。
Django Ninja:第三の選択肢
議論の中で特に注目を集めたのが、Django Ninjaという選択肢でした。
Django NinjaはDjangoの堅牢性とFastAPIのモダンな開発体験を融合させたフレームワークです。
具体的には次のような特徴があります。
認証やパーミッション管理といったDjangoの強みを活かせる。
そして、FastAPIライクな書き方ができる。
さらに非同期処理にも対応しています。
実際に使用している開発者からは高い評価が寄せられました。
「Djangoの利点を保ちながら、必要に応じて非同期処理も扱える」という声が多く聞かれたのです。
FastAPIの非同期処理:理想と現実のギャップ
FastAPIの売りである非同期処理。
しかし、実際の開発では思わぬ落とし穴があることも明らかになりました。
ある開発者はこう警告します。
シンプルな使い方なら問題ない。 でも独自のコルーチンを実行したり、イベントループにアクセスする必要が出てくると途端に複雑になる
なぜこのような問題が起きるのでしょうか。
FastAPIは内部で独自のループとコンテキストオブジェクトを使用しています。
そして、これらは文書化されていません。
結果として、複雑な非同期処理を実装する際に壁にぶつかることがあるのです。
AIコーディングツールとの相性
現代の開発において無視できないのが、AIコーディングツールとの相性です。
Claude CodeやWindsurfといったツールは、今や多くの開発者の必須アイテムとなっています。
この点について興味深い議論がありました。
AIツールは非同期処理のコードを正しく生成するのが苦手な傾向があるという指摘です。
一方で、Djangoには別の利点があります。
歴史が長く文書化も充実している。
そのため、AIツールがより正確なコードを生成しやすいという意見もありました。
ただし、FastAPIも大手企業で広く採用されています。
OpenAIやMicrosoft自身も使用しているため、AIツールのトレーニングデータには十分含まれているはずです。
実践的な判断基準
議論から導き出された判断基準をまとめてみましょう。
MVPを素早く作りたい場合
Djangoの選択が有利です。
なぜなら、必要な機能が最初から揃っているからです。
認証、管理画面、マイグレーションなど、すべてが組み込まれています。
本番環境でのデータベース管理経験が少ない開発者にとっても安心です。
Djangoの自動化された仕組みは心強い味方となるでしょう。
I/O処理が中心となる場合
多くの外部APIとの通信が必要なら、FastAPIの非同期処理が威力を発揮します。
ただし、前述の通り複雑な非同期処理には注意が必要です。
長期的な拡張性を重視する場合
プロジェクトの成長に合わせて、部分的に他の技術を導入することも視野に入れましょう。
ある開発者は興味深い戦略を提案していました。
「パフォーマンスが必要になったら、その部分だけRustで書き直す」というアプローチです。
ハイブリッドアプローチの可能性
興味深いのは、両方のフレームワークを組み合わせる方法です。
実際にこのアプローチを実践している開発者がいました。
彼らの戦略は次の通りです。
DjangoでモデルとCRUD操作を定義する。
そして、特殊な処理や高速性が必要な部分だけFastAPIで実装する。
Django REST FrameworkとFastAPIを使い分けることで、それぞれの強みを最大限に活かせるのです。
まとめ
フレームワーク選択に正解はありません。
重要なのは、プロジェクトの要件と自分のスキルセットを正確に把握することです。
今回紹介した議論から学べることがあります。
「大量のトランザクション」や「AI統合」といった要件があっても、必ずしも最新の技術を選ぶ必要はないということ。
むしろ、開発速度や保守性を重視することも大切です。
枯れた技術を選ぶことも、時として賢明な選択となり得ます。
Django、FastAPI、そしてDjango Ninja。
それぞれに強みがあります。
プロジェクトの現在と未来を見据えて、最適な選択をしてください。
技術選択は手段であって目的ではありません。
ユーザーに価値を提供することこそが、私たちの本当の目標なのですから。