「俺だけレベルアップな件」(Solo Leveling)を知っていますか?
主人公が「システム」からクエストを受け取る。
それをクリアするとステータスが上がっていく。
この設定に魅了された開発者が、現実世界で使えるアプリを作りました。
その話題がRedditで注目を集めていたので、紹介したいと思います。
本記事では、その投稿内容を参考にしながら、ゲーミフィケーションを活用した自己管理の可能性について考察します。
現実世界にシステムを実装するという発想
Redditの投稿者は、約1年をかけてこのアプリを開発したそうです。
名前は「Solo X Player」。
AndroidとiOSの両方でリリースされています。
コンセプトはシンプルです。
日々のタスクをクエストとして設定する。
クリアするとXPと属性ポイントを獲得できる。
腕立て伏せをすればStrengthが上がる。
勉強すればIntelligenceが伸びる。
まさにRPGの主人公になったような体験を日常に持ち込もうという発想です。
この発想自体は決して新しくありません。
しかし、アニメやゲームの世界観をここまで忠実に再現しようとしたアプリは珍しいのではないでしょうか。
主な機能と設計思想
投稿で紹介されていた機能を見ていきましょう。
まずデイリークエストの仕組みです。
ユーザーは自分でクエストを作成できます。
完了するとXPと属性値を得られる。
腕立て伏せ、ウォーキング、読書時間など、日常の行動をクエストとして登録できるようになっています。
次にアプリブロッカー機能があります。
例えば「Instagramを5分使ったら30分から2時間ブロック」といったルールを設定できる。
これもXPシステムと連動しています。
ルールを破るとペナルティが発生するとのこと。
フォーカスタイマーはポモドーロ・テクニックに似た機能です。
集中時間を計測しながらXPを稼げます。
グローバルランキング機能では、他のユーザーと自分の「プレイヤーランク」を比較できるそうです。
コメント欄で見えた課題と可能性
興味深かったのは、コメント欄での議論でした。
あるユーザーが「使わないとステータスが下がる機能はあるのか」と質問していました。
開発者の回答によると、タスクを完了しないとペナルティが発生するとのこと。
XPやストリークを失う仕組みになっています。
これは現実の身体能力に近い設計です。
筋トレをサボれば筋力は落ちる。
その感覚をアプリでも再現しようとしているわけです。
別のコメントでは、ポイントの使い道について質問が出ていました。
「ゲームキャラクターやワールドのショップ以外に何ができるのか」という指摘です。
これは本質を突いています。
ゲーミフィケーションでよく批判される「意味のないポイント、バッジ、リーダーボード」問題。
2012年頃のゲーミフィケーションブームでも、同じ課題が指摘されていました。
また、歩数などの自動トラッキングについても質問がありました。
現時点では手動でタスクを完了させる必要があるようです。
ただ、ヘルス機能との連携は開発中とのこと。
ゲーミフィケーション設計の難しさ
この事例から、ゲーミフィケーションの設計における難しさが見えてきます。
単にポイントを付与するだけでは、ユーザーはすぐに飽きてしまう。
ポイントに意味を持たせる必要がある。
長期的なモチベーションを維持する仕組みも求められます。
Solo Levelingの世界観では、強くなることで新しいダンジョンに挑戦できます。
より強い敵と戦えるようになる。
この「成長の先にある体験」をどう設計するか。
それが鍵となるでしょう。
ペナルティの設計も難しいところです。
厳しすぎると嫌になって使わなくなる。
緩すぎると緊張感がなくなる。
このバランスを取るには、ユーザーごとにカスタマイズできる仕組みが求められます。
まとめ
アニメやゲームの世界観を現実に持ち込む。
この発想は、自己管理に新しい切り口を与えてくれます。
特に、既存の習慣化アプリに物足りなさを感じている人には魅力的に映るかもしれません。
ただし、ゲーミフィケーションは魔法ではありません。
表面的な仕組みだけでは長続きしない。
過去の多くの事例が、それを証明しています。
本当に効果的な自己管理アプリを作るなら、「なぜこのポイントを集めるのか」「成長した先に何があるのか」という問いに答える設計が不可欠です。
この開発者が今後どのようにアプリを進化させていくのか。注目してみる価値はあるでしょう。
