ある日突然、いつも使っているサービスが一斉に使えなくなったら、あなたはどうしますか？
実はこれ、実際に起きた話です。
Cloudflareという企業のサービスに障害が発生しました。
すると、ChatGPT、Claude、Perplexityといった主要なAIサービスが同時にアクセスできなくなったのです。
Xもですね。
この出来事は、私たちに重要な問いを投げかけています。
インターネットは本当に分散型のネットワークなのでしょうか。
見えない巨人、Cloudflare
Cloudflareを知らない人も多いでしょう。
でも、あなたは毎日このサービスを使っています。
正確に言えば、あなたがアクセスするウェブサイトの多くがCloudflareを使っているのです。
Cloudflareは、ウェブサイトの高速化とセキュリティ強化を担っています。
CDN（コンテンツ配信ネットワーク）やDDoS攻撃からの防御など、インターネットの縁の下の力持ちとして機能しているわけです。
その市場シェアは驚異的です。
インターネット上のウェブサイトの相当数が、Cloudflareのサービスを利用しています。
大企業から個人ブログまで、規模を問わず多くのサイトが依存している状況なのです。
連鎖的な障害の実態
障害が発生したとき、影響は予想以上に広範囲に及びました。
まず、主要なAIサービスです。
ChatGPT、Claude、Perplexityが軒並みアクセス不能になりました。
これらのサービスは異なる企業が運営しています。
しかし、共通してCloudflareのインフラを利用していたのです。
さらに興味深いのは、「ステータスページ」も見られなくなったことです。
つまり、障害情報を確認しようとしても、その情報提供ページ自体がCloudflareに依存していたため、アクセスできなかったのです。
皮肉な話ですよね。
サービスの稼働状況を確認するページが、同じインフラに依存していて機能しない。
これでは意味がありません。
なぜ多くの企業がCloudflareを選ぶのか
ここで疑問が生じます。
なぜこれほど多くの企業が同じサービスに依存するのでしょうか。
答えはシンプルです。
Cloudflareが提供する価値が圧倒的だからです。
第一に、パフォーマンスの向上があります。
世界中に分散したサーバーからコンテンツを配信することで、ユーザーの体感速度が大幅に改善します。
第二に、セキュリティです。
DDoS攻撃やボット攻撃から自動的にサイトを守ってくれます。
小規模な企業でも、エンタープライズレベルのセキュリティを手に入れられるのです。
第三に、コストパフォーマンスです。
これらの機能を自前で構築するには莫大な投資が必要です。
Cloudflareを使えば、月額数千円から始められます。
このような理由から、多くの企業が「合理的な選択」としてCloudflareを採用しているのです。
単一障害点という脆弱性
しかし、今回の障害は重要な教訓を残しました。
それは、便利さと引き換えに、私たちが新たなリスクを抱え込んでいるということです。
単一障害点（Single Point of Failure）という概念があります。
これは、システム全体がある一つの要素に依存している状態を指します。
その要素が故障すると、システム全体が機能しなくなってしまうのです。
インターネットは本来、分散型のネットワークとして設計されました。
一部が故障しても、別のルートで通信を継続できる。
それが強みでした。
ところが現実はどうでしょう。
少数の巨大企業のサービスに多くが依存する構造になっています。
これは分散型とは正反対の姿です。
リスク分散の難しさ
「じゃあ、複数のCDNサービスを併用すればいい」
そう考える人もいるでしょう。
理論上は正しい対策です。
しかし、実際にはハードルが高いのです。
まず、技術的な複雑さがあります。
複数のサービスを統合して管理するには、高度な技術力が必要です。
設定ミスがあれば、かえってサービスの安定性を損なう可能性もあります。
次に、コストの問題です。
複数のサービスを契約すれば、当然コストも増えます。
特に小規模な企業やスタートアップにとっては大きな負担となります。
最後に、運用の手間です。
障害対応やアップデートなど、管理すべき要素が倍増します。
限られたリソースで運営している組織には現実的ではありません。
私たちにできること
では、一般のユーザーとして何ができるでしょうか。
まず、依存関係を理解することです。
自分が使っているサービスが、どのようなインフラに依存しているか知っておきましょう。
完全に把握するのは難しいです。
しかし、主要なものだけでも理解しておくと、障害時の対応がスムーズになります。
次に、代替手段を準備することです。
重要な作業を行う際は、複数のサービスやツールを使い分けられるようにしておきましょう。
AIサービスであれば、ChatGPTだけでなく、他のサービスも使えるようにしておく。
そんな準備が大切です。
GoogleのGeminiは、Cloudflareの影響を受けませんでした。
また、オフラインでも作業を継続できる環境を整えることも重要です。
クラウドサービスは便利です。
しかし、ネットワーク障害時には使えなくなります。
重要なデータはローカルにもバックアップを取っておきましょう。
企業が考えるべきこと
企業の立場では、より戦略的な対応が必要です。
ビジネス継続計画（BCP）の見直しが欠かせません。
Cloudflareのような基幹サービスが停止した場合の対応策を、事前に検討しておくべきです。
完全な冗長化は難しくても、最低限のサービス提供を維持する方法は準備できるはずです。
また、ベンダーロックインのリスクも考慮すべきです。
特定のサービスに深く依存すると、将来的な選択肢が狭まります。
可能な範囲で、標準的な技術やオープンな仕様を採用することで、柔軟性を保つことができます。
まとめ
Cloudflareの障害は、現代のインターネットが抱える構造的な問題を浮き彫りにしました。
便利なサービスへの依存は避けられません。
しかし、その裏にあるリスクを理解し、適切に対処することは可能です。
完璧な解決策はありません。
でも、リスクを認識し、できる範囲で対策を講じる。
それが現実的なアプローチです。
テクノロジーの進化は止まりません。
新しいサービスが登場し、私たちの生活をより便利にしてくれるでしょう。
その恩恵を受けながらも、健全な警戒心を持ち続けることが大切です。
