「プログラミングができないから、ゲーム開発は無理」
そう思い込んでいませんか?
先日、Redditで興味深い投稿を見つけました。
コードを一切書けない3Dアーティストが、AIを相棒に本格的なRTS(リアルタイムストラテジー)を作り上げたという報告です。
投稿の概要
投稿者は3Dアーティストです。
ハイポリからローポリへのモデリングを専門としており、プログラマーではありません。
それでも、Claudeを活用して古代戦争をテーマにしたRTSをソロ開発しました。
開発環境はUnreal Engine 5(C++)で、期間は10ヶ月。
そして、最初のプレイテスト版をitch.ioで公開するところまで到達しています。
AIによるゲーム開発というと、複雑なプロンプト設計の話が目立ちます。
しかし、この投稿者のワークフローはもっと地に足がついたものでした。
ポイントは3つあります。
1. 初心者の頭の中を整理してもらう
ゲーム開発の初心者は「何を知らないのかすら知らない」状態からスタートします。
投稿者も同じでした。
そこで、Claudeに散らかった思考の整理を任せたそうです。
何を最初に作るべきか。
どういう順番で進めるべきか。
こうした優先順位づけをAIと一緒に行いました。
同時に、ゲーム開発の基本概念や構造的な知識もAIから学んでいます。
つまり、AIをコード生成マシンとしてだけ使ったのではありません。
家庭教師兼プロジェクトマネージャーとしても使ったわけです。
この使い方は、初心者ほど効果が大きいでしょう。
2. 一気に作らず、段階的に進化させる
ここが最大のポイントです。
投稿者は、巨大なフレームワークを一発で出力させるような依頼をしませんでした。
代わりに、ゲームを少しずつ積み上げています。
流れは次の通りです。
- 兵士に命令を出す基本的な移動処理を作る
- 各兵士に名前とステータスを持たせる
- 戦闘アビリティを実装する
- 敵と戦わせる
各ステップは、前のステップの上に直接積み重なっています。
そして、反復を繰り返すうちに、頭の中にあったゲーム像へと徐々に近づいていったそうです。
コメント欄でも、この順序を評価する声がありました。
戦闘の前に兵士の名前とステータス、つまりアイデンティティの層を安定させた点が賢い、という指摘です。
土台が固まる前に複雑な処理を載せると、あらゆる箇所が壊れます。
初日にAIへ「RTSのフレームワーク全部作って」と頼むのとは、正反対のアプローチだと言えるでしょう。
3. 魔法のプロンプトより、具体性と忍耐
投稿者は「ゲームが壊れないようにする魔法のシステムプロンプト」には頼らなかったと明言しています。
代わりの戦略はシンプルです。
とにかく具体的に説明する。
それだけでした。
もちろん、Claudeが混乱したり、指示から外れたりすることはあります。
それでも慌てません。
反復し、テストし、修正する。
意図した通りに動くまで、このサイクルを淡々と回し続けたそうです。
派手なテクニックではありません。
しかし、非プログラマーがAI開発を成功させる本質はここにあるのだと思います。
コメント欄で交わされた議論
この投稿には多くの反応が寄せられました。
有益な議論をいくつか紹介します。
反復こそが正解、一発生成は「スロップ」
現役開発者からのコメントが印象的でした。
AIに一発で作らせるのではなく、反復しながら進める方が開発プロセスをコントロールできる。
自分もそう働いている、という内容です。
投稿者も同意しています。
むしろ、一発生成で作ったものこそAIスロップ(低品質な量産物)に分類されるだろう、と皮肉を交えて述べていました。
アートスタイルの美しさとビジョンの一貫性が評価されたのは、人間が制御し続けたからこそです。
ゲームプレイ動画は必要か
一方で、批判的な意見もありました。
プレイ映像がない点です。
ある人は、こう指摘しています。
動画はゲームの現状を伝える手軽な手段である。
しかも、開発途中の作品を紹介するVlogはYouTubeに山ほどある。
それに、見ず知らずの人が作った数百MBのファイルをダウンロードするのは、マルウェアの懸念もあってためらう、と。
これはもっともな意見です。
ダウンロードのハードルを下げる工夫は、個人開発者にとって重要な課題でしょう。
対する投稿者の言い分は、こうでした。
今回はあくまでフィードバック収集のための垂直スライス(縦切りの試作版)であり、何も確定していない。
パイの材料は揃ったが、どんなパイにするかはまだ決めていない。
だから、動画制作より動作の安定化を優先したい。
どちらの立場にも理があります。
宣伝を取るか、開発速度を取るか。
個人開発では常につきまとうトレードオフです。
10ヶ月で垂直スライスは遅いのか
「10ヶ月かけて垂直スライスだけ?」と疑う声も上がりました。
これに対しては、投稿者本人と別のコメント投稿者の両方が反論しています。
理由は次の3点です。
- 本業を持つ社会人の情熱プロジェクトである
- 毎日作業できたわけではない
- アートアセットの制作は想像以上に時間を食う
ちなみに、疑いをかけた本人は後に態度を変えています。
「もっともな指摘だった、自分が悲観的になりすぎていた」と素直に認めました。
そして、この誠実なやり取りには称賛の返信がついています。
AIはプログラマーとアーティスト、どちらを置き換えるのか
興味深い脱線もありました。
「プログラマーなしでゲームが作れるようになった。なのに、アーティストなしではまだ作れない」という観察です。
投稿者も、この逆説に気づいていたそうです。
実際、このゲームの3Dモデルとテクスチャはすべて人間の手によるもの。
AI製アセットは現状、多くの場合ひと目でスロップだと分かってしまう、というのが投稿者の見解でした。
ただし、反論もあります。
BlenderをMCPサーバー経由でLLMに接続すれば、今すぐ3D制作をAIに任せられるという指摘です。
さらに、最新モデルの3Dモデリング能力は急速に向上しており、人間を超えるのは時間の問題だという予測もありました。
投稿者自身も、いずれAIのアート能力が実用レベルに達すると見ています。
むしろ、それを当てにしているとまで述べていました。
この事例から学べること
技術的な話を抜きにしても、この投稿から得られる教訓は多いはずです。
まず、自分の専門領域を軸に据えること。
この場合は3Dアートです。
そして、足りないスキル(プログラミング)をAIで補うこと。
この組み合わせが、リソースのない個人にゲーム開発の扉を開きました。
投稿者は、こう予想しています。
情熱とアイデアを持つインディー開発者にとって、この手法が標準になっていくだろう、と。
そして何より、進め方が重要です。
一発生成に夢を見ない。
小さく作り、テストし、積み重ねる。
具体的に指示し、失敗しても淡々と修正する。
地味ですが、これが現実に機能したワークフローでした。
まとめ
コードが書けない3Dアーティストが、Claudeとともに10ヶ月でRTSのプレイテスト版を完成させました。
成功の鍵は3つです。
- AIに思考の整理と学習を任せた
- 機能を一つずつ段階的に積み上げた
- 魔法のプロンプトに頼らず、具体的な指示と反復で乗り切った
コメント欄では、動画公開のタイミングや開発ペースをめぐる健全な議論も交わされていました。
また、AIがプログラマーとアーティストのどちらを先に置き換えるのか、という問いも当面は続きそうです。
あなたにも「スキルが足りないから」と諦めているプロジェクトはありませんか?
足りない部分は、AIが埋めてくれる時代です。
小さく始めて、少しずつ積み上げていきましょう。
